【11月19日 AFP】英国の科学者とアーティストによる「宇宙ごみ(スペースデブリ)」問題啓発プロジェクトが18日、ロンドン(London)の王立天文学会(Royal Astronomical Society)で立ち上げられた。

 追跡可能な2万7000個の宇宙ごみに光を当てるためのアーティストと研究者による創造的プロジェクト「Adrift(漂流中)」は、映画、音、ソーシャルメディアなどを用いて宇宙ごみの危険性を探る。立ち上げを支援してきた英サウサンプトン大学(University of Southampton)航空宇宙学科長のヒュー・ルイス(Hugh Lewis)氏は「宇宙ごみ問題への対処は人類にとって最大の環境課題の一つだが、おそらく最も知られていない課題の一つでもある」と語り、地球の衛星軌道上を周回する大量の宇宙ごみが、将来の宇宙探査に深刻な脅威をもたらすと述べた。

 宇宙ごみは、旧ソ連による人類初の人工衛星「スプートニク(Sputnik)1号」の打ち上げ以来、数多く実施されてきたミッションの際に出たものだ。全部で約1億個あると考えられているが、小さすぎて把握できないものもある。

 映画製作者キャス・レ・コートワー(Cath Le Couteur)氏が手掛けたドキュメンタリーは、米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル「ディスカバリー(Discovery)」の2006年のミッションの際、英国系米国人の気象学者で宇宙飛行士のピアース・セラーズ(Piers Sellers)氏が宇宙遊泳中にへらを落とした話を扱っている。へらは時速2万7000キロで周回した後、大気圏で燃え尽きた。

 プロジェクトの観衆はツイッター(Twitter)上で、米国が打ち上げた2番目の人工衛星で現存する最古の宇宙ごみ「ヴァンガード(Vanguard)」のような宇宙ごみの中から一つを「選定」することができる。プロジェクトには、電気機械楽器を使って宇宙ごみの動きを音に変換することで、宇宙ごみの軌道を音で追跡する試みなども含まれている。

 英国アカデミー賞(British Academy Film Awards)受賞作曲家でサウンドアーティストのニック・ライアン(Nick Ryan)氏は、宇宙ごみを象徴する物体(それ自体は無音)を使って1000種類の音を録音。それらの音を使って宇宙からの生音データを再現した。(c)AFP/Ruth HOLMES