【11月13日 AFP】民衆が政治的主張の象徴として活用してきたものには、リボンや花、色、バッジなどがある。1974年のポルトガル革命のカーネーションや2004年のウクライナの「オレンジ」革命から、最近ではほぼあらゆるチャリティーイベントで採用されているシリコンのリストバンドまで様々だ。

 そこに最近、安全ピンが加わった。目立たず実用的な道具だが、米大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が勝利した後、非寛容に対する連帯を示すために安全ピンを身に着ける米国人が増えていることから、このところ急速に目立つようになっている。

 安全ピンは1849年、15ドル(約1600円)の借金を返済するための金が必要だった米国人の機械工が発明。安全ピンには、とがって危険な先端から使う人などを保護するため、巧みな形状の留め金が付いているが、それが着眼点となった。

 トランプ氏の勝利から数日が経過する中、人々はシャツなどに安全ピンを着け始めている。同氏が選挙戦で声高に展開した主張におびえがちな少数派や女性、移民を支持し、こうした人々の安全や保護を求めるメッセージを伝えるのが目的だ。

 ソーシャルメディアで行われているこの安全ピン運動は、ツイッター(Twitter)によって英国で注目を集めた。6月の国民投票で英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆる「ブレグジット(Brexit)」が決まって以来、急増していると伝えられている、強い反移民感情に基づくヘイトクライム(憎悪犯罪)に直面している移民や少数派に対し、連帯していく姿勢を表明している。

 米大統領選以来、米女優のデブラ・メッシング(Debra Messing)さんら有名人や一般の人々が、ソーシャルメディアに安全ピンの画像を投稿するなど、この現象は海を越えて広まり始めた。(c)AFP/Brian KNOWLTON