【11月11日 AFPBB News】東京・池袋の大通りから少し離れた閑静な通りに、ラバーウェア専門ブランド「クラゲ(Kurage)」は店を構える。「日本初のラバーオートクチュール」として、カスタムデザイン、採寸オーダー、修理、補修などラバーウェアに関するすべてを請け負う工房兼ショップだ。

 デザイナーはドレッドヘアーが印象的なキド(Kid’O、47)。この道12年のベテランだ。「うちはラバーを必ずしもフェティッシュなものとは位置付けていない。僕は顧客の注文どおりに制作するだけ。あとの使い方は自由に、というスタンス。ファッションかエロかは見る人の自由」と語る。 

「クラゲ」のショップにてポーズをとるモデル(2016年10月11日撮影)。(c)AFPBB News/Yoko Akiyoshi

■海外での高い評価

「クラゲ」は2015年、2016年と2年連続で「ヨーロピアン・フェティッシュ・アワード(The European Fetish Awards)」においてベスト・フェティッシュ・ファッション・デザイン賞を受賞するなど、海外で高く評価されているブランドだ。とくに一つひとつ作り込む手貼りの模様や、バルーンのように膨らませた造形的なヘッドピースなどから高い技術力とセンスがうかがえる。「日本にはまだラバーを受け入れる土壌がないが、外国ではコアなところから支持されている」。海外でのショーも多く、とくにラバーウェア愛好家人口が多いアメリカやドイツでの人気が高いという。

 ラバーウェア作りは普通の布地を使う服作りとは違い、針や糸を使わない。ロータリーカッターやゴム切りばさみなどの専門の工具でラバーシートを裁断し、業務用ボンドで接着面を貼り合わせて圧着する。また、着用時の滑りを良くするローションや光沢剤など、専門のケア用品も必要だ。

「26歳のときにラバーウェアの写真を見て衝撃を受け、本場ドイツへ技術を学びに行った。昔のヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)もラバー素材を使っていたし、抵抗がなかった」とキドは当時を振り返る。 

ショーのため、マスクの調整をするキド(2016年10月11日撮影)。(c)AFPBB News/Yoko Akiyoshi

■トキワ荘から受けた影響

「漫画やアニメなど日本的な影響こそ、クラゲのクリエーションを特別なものにしている」と指摘するのは、ドイツ発祥のフェティッシュ誌として知られる「マーキス(MARQUIS)」誌の創設者、ピーター・W・ツェルニヒ(Peter W. Czernich)だ。「西欧のフェティッシュデザイナーはもっとダークだが、彼のスタイルはカワイくてクレイジー。確実にフェティッシュ文化とファッションの境目を超越している」と語る。

 キドは、手塚治虫(Osamu Tezuka)さんら著名漫画家が居住していたことで知られるトキワ荘の近くで生まれ育った。「昔からまわりに漫画やソフビ(ソフトビニール製の人形)などが身近にいっぱいあった。小学校の頃から色っぽいなと思っていたのが『魔女っ娘メグちゃん』や『銀河鉄道999』のメーテルといった漫画やアニメのキャラクター。だからこういうマスクが得意なんだと思う」と自身のクリエーションを分析する。