【11月10日 AFP】米大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が勝利したことを受け、世界各国に衝撃が走っている。反対派が「危険な」指導者の米国首脳就任に身構える一方で、ポピュリスト(大衆迎合主義者)の政治家たちは一般市民が投票を通じて起こした「革命」を歓迎した。

 貿易から人権、気候変動、世界的な武力闘争まですべての問題に影響を及ぼす大統領選。深刻な分断を生んだ選挙戦の結果を受け、同盟諸国は外交上の平静を装う姿勢を見せている。

 世界市場の一部は「トランプ・スランプ(急降下)」に見舞われた。政治経験を持たない不動産王トランプ氏の政策に対する不安感から、アジアでは株価が暴落。一方、欧州市場の株価は一旦下落した後に若干回復。米市場も混乱した。

 メキシコ人移民を強姦者や麻薬密売人と呼び、両国の国境に数十億ドル(数千億円)をかけて壁を建設して費用をメキシコに払わせると公言したトランプ氏の当選に、メキシコ人は大きな衝撃を受けた。

 一方のカナダでは、移住方法を模索する米国人が殺到した移民省のウェブサイトがダウンした。

 欧州のポピュリスト政治家たちは、仲間であるトランプ氏の当選を受け、臆することなく喜びを表現。英国の欧州連合(EU)離脱、通称「ブレグジット(Brexit)」推進派の急先鋒だったナイジェル・ファラージ(Nigel Farage)氏は、「2つの偉大な政治革命」を称賛した。

 貿易協定の破棄や移民の流入制限、気候変動の否定など、世界的潮流から逸脱した政策を基盤に選挙戦を進めたトランプ氏。主流派権力への激しい敵対姿勢によって権力を得た様子を、世界各国も注意深く見守った。

 英学者のマシュー・グッドウィン(Matthew Goodwin)氏はツイッター(Twitter)で、「私たちは再び、白人で低学歴、大部分が労働者階級に属し、主流派政治から取り残されて世界市場に脅かされていると感じ、急速な民族的変化に大きな不快感を持つ人々の不満と怒りの深さを理解することに失敗した」と指摘。

 英ロンドン(London)のバーで選挙結果を見守っていた米サンフランシスコ(San Francisco)出身の女性(24)は、「ブレグジットにとても似ているけど、たぶんもっとひどい。怖いです」と話し、「同性愛者の権利や妊娠中絶など、私たちの人権が後退するでしょう」と付け加えた。

 またメキシコで「ヒラリー・クリントン氏を大統領に」と書かれたTシャツを着て選挙結果を見ていた建築家の男性(35)は、「悪夢だ。今後何が起こるのか、多くの不安がある」と語った。

 英国の左派寄り日刊紙ガーディアン(Guardian)は、米国は「最も危険な指導者」を選出したと報道。「恐れるべきことは多い。米国民は、深淵へと足を踏み入れた。次期大統領は不安定で偏見に満ち、性的搾取者で、衝動に突き動かされるうそつきだ」と糾弾した。(c)AFP/Tanya WILLMER