■地域格差

 がんの患者と死者が最も大きく集中しているのは東アジア地域で、2012年には患者170万人、死者100万人を記録した。この数字の大半は中国で発生したものだった。

 人口当たりのがん患者の割合はいまだに、欧州、米大陸、アジアなどの富裕国で最も高い値が報告されているが、その理由の一部は、スクリーニング検査の利用頻度にあると、報告書は説明している。

 それに対して、死者数については、診断と治療の可用性が低い低中所得国で、その割合がはるかに高い水準となっている。がんの死亡率が最も高い国には、アフリカのジンバブエ、マラウイ、ケニアと、モンゴル、パプアニューギニアなどがある。

 がんの種類に関しては、乳がんと肺がんが富裕国と貧困国の両方で患者数の上位2位を占めており、第3位は先進国で大腸がん、途上国では子宮頸がんとなっている。

 子宮頸がんは、その原因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンの接種で予防が可能であるとされ、「パップテスト(子宮頸部細胞診)」と呼ばれるスクリーニング検査で容易に発見できる。

 報告書は「世界140か国で診断件数が最も多い女性のがんは乳がんだが、低中所得国39か国では、子宮頸がんが最多となっている」とした。

 また、治療とケアにかかる費用と労働生産性の損失などを含む、男女両方のがんによる世界の経済的負担額は、2009年に約2860億ドル(約29兆7000億円)に上ったという。(c)AFP/Mariëtte Le Roux