【11月1日 AFP】米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が掲げている「メキシコ国境に壁を建設する」という公約を非現実的と捉える人は多い。しかしジム・チルトン(Jim Chilton)さん(77)は、それ以外に安眠できる道はないと考えている。

 メキシコと国境を接するアリゾナ(Arizona)州にある牧場の5代目オーナーであるチルトンさんは、自分の牧場で牛に交じって麻薬密売人の姿を目にすることに業を煮やし、壁があればその悩みは解消されるはずだと話す。

 チルトンさんは、「トランプ氏には心から感服している。今の国境制度の問題点を把握する洞察力と知識を備えているからだ」として、「私たちには壁が要る。私は10年前からそう訴えてきた。(壁があれば)私の暮らしは今よりずっと良くなり、もっと安心できるはずだ」と語る。

 トランプ氏は、米国の南側の国境沿いに壁を建設する案を公約の柱としており、80億~120億ドル(約8400億~1兆3000億円)ともされる建設費用をメキシコ側が負担すべきだと主張してきた。さらに、約1100万人いるとされる不法移民を強制送還すると訴えている。

 チルトンさんは、「私が暮らしているのは(メキシコ最大の麻薬密売組織)シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)が占拠している危険地域だ」とため息をつき、牧場の小高い一角を指さしながら、向こうには密売人の見張り役として高性能の装備を整えた監視員が配備されていると説明した。

 腰に銃を携行し、玄関脇にはライフル銃、枕元にはピストルを置いているというチルトンさん。他の牧場経営主らも、辺ぴな国境地域はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」などが米国内に工作員を送り込むルートになっている恐れがあるとして警備強化に賛同していると話す。

 米国の一部議員の間からも、メキシコにいるIS戦闘員が国境を越えて米国入りしているという意見が出ているが、当局はその証拠はないとしている。