【10月29日 AFP】フィリピン当局は29日、中国と領有権を争っている南シナ海(South China Sea)のスカボロー礁(Scarborough Shoal)にいた中国船団が引き揚げたと発表した。

 フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は先週、中国を訪れ、長年の同盟国である米国とは距離を置き、中国との関係を強化する姿勢を示していた。

 フィリピン・ルソン(Luzon)島から230キロ離れた豊かな漁場であるスカボロー礁は、2012年以降、中国が実効支配しており、時には放水銃を使ってフィリピンの漁船を追い出している。

 南シナ海の領有権をめぐり今年、ベニグノ・アキノ(Benigno Aquino)前比大統領の主導でフィリピンが中国を提訴した裁判では、フィリピンが圧倒的に勝利した。しかし、ドゥテルテ大統領は最近、訪中した際にこの裁判の裁定を誇示することはなく、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席もドゥテルテ大統領に対し、対立する理由はなく、困難な課題については「一時的に棚上げすることもできる」と述べた。

  エルネスト・アベリャ(Ernesto Abella)比大統領報道官は「同海域に中国の沿岸警備艇がいる様子はない。このことに関し、公式の説明はないが、両国間関係にとって前向きなメッセージを発しいる。特にフィリピンの漁業関係者にとって歓迎すべき進展だ」と述べた。

 ドゥテルテ大統領は先週、中国から帰国した際、「何日間か待ってみよう。われわれはスカボロー礁に戻れるかもしれない」と述べ、中国が同海域から引き揚げる可能性を示唆していた。(c)AFP