【10月24日 AFP】日本版マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、歌う猫たち、鎧をまとったモデル――JポップやSF文化が「アマゾン ファッション ウィーク 東京(Amazon Fashion Week TOKYO)」を、唯一無二の祭典へと変えていた。

 ファッションとエンタテイメントの宝庫である日本では、若手から大御所までさまざまなブランドがミュージカルやストリートカルチャー、アニメなどをフックに、人々の興味を掻き立てている。このファッションウィークを閉じるにふさわしい、もっとも際立っていたショーをいくつか紹介しよう。

■日本のマーク・ジェイコブス

「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」は、東京・渋谷の宮下公園(Miyashita Park)でショーを開催し、喝采を浴びた。同公園は、東京五輪に向けた整備で閉鎖されるため、これが最後の華やかなイベントとなる。

 注目を集めたのは、足首まで重なり合うリボンでレースアップされた20センチのプラットフォームシューズ。ニューヨークでお披露目された「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」の17年春夏コレクションで発表された靴と似ているが、デザイナーの坂部三樹郎によると、ハイファッション界の巨匠ジェイコブスが発表する前にすでに製作に着手していたそうだ。ルックは極端なロングなシルエットで、オーバーサイズのスーツや脚もあらわなマイクロミニのスカート、サスペンダーで吊るされたホットパンツが、ストライプのシャツとコーディネートされた。

 フェザーで彩られたガーリーなドレスやメタリックなプリーツスカート、うさぎの刺繍があしらわれたキュロットなどからは、日本のロリータ文化や原宿のストリートカルチャー、そして“カワイイ”文化の影響が見て取れる。

 同ブランドはアヴァンギャルドなテイストで多くの日本人ポップスターから愛され、今年10周年を迎える。日本人デザイナーの多くは生地にフォーカスするが、坂部は今回、70年代、80年代、そして90年代をミックスすることで、新しいシルエットを提案したかったと語る。「なにか新しいものを生み出したかった」と彼はAFPの取材に対して説明した。

■猫たちが歌うステージ

 英作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバー(Andrew Lloyd Webber)が手がけた大ヒットミュージカル「キャッツ(Cats)」ほどではなく、完璧さには欠けるかもしれない。だが気鋭のデザイナー、手嶋ユキヒロ(Yukihiro Teshima)が手掛ける「ユキヒーロープロレス(Yukihero Pro-wrestling)」のファッションショーは、ベタさにおいてはおそらく今シーズン1番だろう。ナイトクラブを舞台に、通常10分のところ、40分ものミュージカル形式で新作が披露された。

 ショーに出演したのは女性アイドルグループ「夢みるアドレセンス(Yumemiru Adolescence)」、そしてアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)風の衣装をまとったモデル、そして日本人俳優たち。舞台上は多種多彩でユーモアやキッチュさがごった返し、アイドルたちは猫耳をつけ、マルチカラーのワンピースやキャンベルスープ柄のコスチュームでダンスを披露した。

 モデルたちはウォーホルのマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)やエリザベス・テイラー(Elizabeth Taylor)の有名なポートレイトをイメージした1950年代風の色とりどりのメイクアップで登場。コスチュームには、90年代に「ハローキティ(Hello Kitty)」と同時にリバイバルブームとなった「モンチッチ(Monchicchi)」のモチーフが描かれ、デニムにはバナナモチーフが貼り付けてある。映画やプロレスなどの衣装も手掛けるデザイナーの手嶋に今回のメッセージを尋ねると、「ファッションショーを通して人々に楽しさを伝えたかった」と答えた。

■シルバーに輝くおさげ髪

 デザイナーの由利佳一郎(Keiichiro Yuri)は3Dデザイナーというバックグラウンドを活かしたバッグ作りで有名だが、先シーズンより「ケイイチロウセンス(Keiichirosense)」としてファッションウィークに参加している。彼はもしかしたら今シーズン最も変わった存在かもしれない。

 ショーは海の効果音から始まり、プリンス(Prince)の楽曲「ゴールド(Gold)」で幕を閉じた。フィナーレではデザイナー自身がフューチャリスティックな厚底シューズで登場し、人形を2つズボンのウエストに差し込んで見せた。

 コレクションは巨大なつば広帽やSF風のプラスチックの鎧、メタリックなスカートなど、エイリアン物やエイリアン映画に出てきそうな衣装が盛りだくさん。シルバーのレースアップで作られたアームウォーマーやラプンツェル風のおさげ髪はシルバーのエクステンションと組み合わされ、ルックを完成させていた。

「クールジャパンを私なりに表現した」と由利は説明する。「今の若い子たちが未来を作っていくと思う。彼らの原宿スタイルは正解だと思っている。お前たちが時代を作るんだ!と私は伝えたい」(c)AFP /JENNIE MATTHEW