【10月12日 AFP】金色の縁取りの付いたミニスカートに白いレザーブーツといういでたちで、銀色のポンポンを振りながら姿勢良く歩く滝野文恵(Fumie Takino)さん(84)──若さの秘訣(ひけつ)はチアリーディングだ。

 滝野さんら高齢の元気な女性たちが所属するチアリーディングチームは、「ドリームガールズ(Dreamgirls)」の曲に合わせて熱演した。激しく息を切らし、おそろいのピンクのタンクトップは汗びっしょり。それでもメンバーらは鼻高々だ。

 滝野さんがチアリーディングの魅力に取りつかれたときには、既に還暦を過ぎていた。自らチアリーディングのチーム「ジャパンポンポン(Japan Pom Pom)」を結成し、過去およそ20年にわたって20人以上の快活な中高年女性を率いてきた。

 AFPの取材に応じた滝野さんに入団資格を尋ねたところ、「入会の条件は55歳以上」との答えだった。メンバーの平均年齢は70歳だ。

「70歳と言っているけど、やっぱり皆さんちょっと下り坂」と言いながら、20年頑張ってよくここまで来ましたよ、と滝野さんは笑った。

 日本人の平均寿命は、女性87歳、男性80歳。だが「健康寿命」はというと、男女共にこれより10年は短いとされる。

 しかし滝野さんは、この華やかな趣味が老化防止に役立ち、心も体も生き生きしていると話す。

 若い頃にはポンポンを手にする勇気はなかっただろうと振り返る滝野さん。大胆になれたのは、中年になってから経験した変化のおかげだったという。

■50代で留学、チアリーディングとの出合いは60代

 最初に変化が訪れたのは53歳のとき。滝野さんは米テキサス(Texas)州に留学を果たした。北テキサス大学(University of North Texas)で老年学修士を取得した滝野さんは、新たに得た解放感を胸に帰国した。しかし、極めて米国的なチアリーディングに出合ったのは日本に戻ってからだったという。

 日本でチアリーディングが広まったのは30年ほど前。今でも学校や大学の部活動を除けば、人口はさほど多くない。「シニアチア」の存在を初めて知り、「ものすごいびっくりした」と話す滝野さんは、すぐさま友人5人を誘ってグループをつくった。

 20年たった今も、滝野さんらは毎週集まって集中トレーニングを行っている。アクロバティックな動きこそ控えているものの、皆真剣に練習に取り組み、どうすればもっと良くなるかと動画分析にも余念がない。

 今年はチーム結成20年を祝して、チアリーディングやダンス競技などの普及団体「ユナイテッド・スピリット・アソシエーション(USA)」の日本支部が毎年開催している全国選手権大会にゲスト出演した。本大会の参加者らは、大半が高校生か大学生だ。

 メンバーの中には加齢に伴い、健康上の問題や高齢の夫の介護といった理由で辞めていった人もいる。だが新メンバーを募るのは難しくないという。

 正規メンバーとして加入を考えている60代後半の草島伸子(Shinko Kusajima)さんは、新たな人間関係が生まれるのも大きな魅力だと語る。「年を取ると、友達がどんどんいなくなってしまいます。でもここに来れば友達がいて、わいわいできるから」(c)AFP/Harumi OZAWA