■暗い過去を乗り越え

 ピッチ上では多様性に欠けるラサFCだが、チベットを本拠地とするクラブチームがプロリーグに加われば、チベット族に中国との一体感をもっと感じてもらえるのではという期待がある。

 しかし、ラサFCは現在、4部に相当するアマチュアリーグに参戦しており、スター選手や富豪のオーナーが関わり巨額が動く中国スーパーリーグ(Chinese Super League)とでは天地の差がある。

 そのような現実があるにもかかわらず、チダン会長は楽観的だ。高地にあるラサでのホームゲームなら、有利に試合を進めることができることを期待しての発言なのかもしれない。

 中国政府はこれまでにも、1970年代の「ピンポン外交」や2008年の北京五輪にみられるように、スポーツを政治ツールとして活用し、新たに獲得した経済力を誇示してきた。

 一方、国外へ移住したり亡命したりしているチベット族にも、サッカーを自らの主張を広める方法の一つにしたいという考えはある。昨年には、インドに拠点を置くチベット族の女子サッカーチームが、ドイツ首都ベルリン(Berlin)で開催された大会で中国の大学チームと対戦した。

 中国政府による支配を逃れインドに樹立されたチベット亡命政府が支援する「チベット代表チーム」は国際サッカー連盟(FIFA)には加盟していないが、2001年以降同じくFIFA非加盟のチームと何度も対戦している。

 対戦結果は、デンマーク領グリーンランド(Greenland)、フランス南部プロバンス(Provence)、英領ジブラルタル(Gibraltar)には実力差をいやというほど見せつけられたが、アフリカ西部の西サハラ(Western Sahara)には12対2と大勝を収めている。(c)AFP/Ludovic EHRET