【10月2日 AFP】鋼鉄のレール、印象的なれんが造りの守衛所、いくつも立ち並ぶ同型のバラック、ガス室、焼却炉――専用のバーチャルリアリティー(仮想現実、VR)ヘッドセットを装着すれば、これらの歴史から消すことのできない光景が目に飛び込んでくる。

 バイエルン州刑事局 (LKA)の努力によって、現在まで生き残っているナチス・ドイツ(Nazi)の戦犯を追跡するドイツ警察や検察当局は自ら、3Dで正確に再現されたアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所に身を置く体験ができる。

 VRの強制収容所は、70年前に行われた残虐行為を暴くホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)裁判に、21世紀の最新技術で真相究明を補助するものとなる。

 ナチス戦犯の捜査を行っている連邦当局のイェンス・ロンメル(Jens Rommel)氏はAFPに「容疑者たちは往々にして、アウシュビッツで働いていたのは事実だが何が起きていたのか知らなかったと弁明する」と話す。ホロコースト裁判で法的に問題となるのは、人々がガス室に送られたり射殺されたりしていたことを容疑者が知っていたのかという点であり、戦犯容疑者に対しこの点を追及する際に、この非常に優れた最新装置は有益だとロンメル氏は語った。

 第2次世界大戦(World War II)中にナチスが占領したポーランドで110万人が犠牲となった悪名高きアウシュビッツ収容所を、驚くほど詳細に再現する装置を開発したのはLKAのラルフ・ブレッカー(Ralf Breker)氏(43)だ。「私が知る限り、ここまで正確なアウシュビッツのモデルはない。グーグルアース(Google Earth)よりはるかに精密だ」とブレッカー氏は語った。(c)AFP/Deborah COLE