【9月24日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は23日、2001年9月11日の米同時多発攻撃の犠牲者遺族がサウジアラビア政府を提訴することを可能とする法案への署名を拒否した。議会と国民が反発する恐れもある。

 オバマ大統領は遺族らに「深い哀悼の意」を表す一方、同法案は「米国の国益を損なう」と述べた。

 約3000人が死亡した米同時多発攻撃にサウジアラビア政府の関与があったと考える遺族らは、同法案の成立を求めて運動してきた。

 米同時多発攻撃の実行犯19人のうち15人はサウジアラビア国籍だったが、同国政府とのつながりは一切証明されていない。サウジアラビア政府も実行犯との一切の関与を否定している。

 一方、機密扱いから外された文書によって、米情報機関がサウジアラビア政府と実行犯とのつながりを多角的な視点から疑っていたことが明らかになっており、サウジアラビア政府は舞台裏で、同法案の廃案に向けて激しいロビー活動を展開してきた。

 オバマ大統領の在任中初めて、共和党と民主党の議員らが協力して大統領による拒否権の行使を覆す可能性もあり、議会筋によると早ければ27日にも動き出すとみられている。任期の最後にこうした動きがあるのは、オバマ政権が著しく弱体化したことの表れといえる。

 米大統領選の共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏と民主党候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官はいずれも、大統領になれば同法案に署名する意向を示している。

 オバマ政権は拒否権が覆されるのが、政治情勢が落ち着き世論も変わっている可能性がある11月8日の大統領選後になることに望みをかけることになる。(c)AFP/Andrew BEATTY