【9月25日 AFP】米大リーグ(MLB)、ロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)の名アナウンサーとして約1万試合で実況を務め、25回のワールドシリーズ、18回の無安打無得点試合、そして3回の完全試合を目撃したビン・スカリー(Vin Scully)氏が、ついにマイクを置くことになった。

 現在88歳のスカリー氏は親しみを込めて「ボイス・オブ・サマー(夏の声)」と呼ばれ、ドジャースが米東海岸のブルックリン(Brooklyn)を本拠地としていた時代にアナウンサーとなり、それ以降67年間にわたり同球団の実況を務め、ずっとファンを魅了してきた。

 独特で心地良く、完璧なテンポで聞こえてくるスカリー氏の実況は、リストに挙げようとしてもきりがないほど、たくさんの歴史的名場面とともに刻まれている。

 ニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)のドン・ラーセン(Don Larsen)が完全試合を達成した1956年のワールドシリーズのみならず、ハンク・アーロン(Hank Aaron)が通算715本目の本塁打を放ち、ベーブ・ルース(Babe Ruth)の記録を打ち破った1974年の試合でも、スカリー氏が感動を誘う実況を行った。

 しかし、あと数日で、ベースボール史上最も輝かしいキャリアの一つが終わりを迎える。

 スカリー氏は25日に行われる試合で、ドジャースが1962年にロサンゼルス(Los Angeles)に移転して以来ずっと定位置だったドジャースタジアム(Dodger Stadium)の放送席から、レギュラーシーズンでは今季最後のホームゲームを実況する。さらに、同最終戦となる来月2日のサンフランシスコ・ジャイアンツ(San Francisco Giants)戦では、敵地の放送席に座り、最後に1イニングを実況することになっている。

 スカリー氏が最後の実況に臨む日と、8歳の少年だった80年前に野球と恋に落ちた忘れられない日には、素晴らしい偶然が重なっている。