【9月10日 AFP】米中西部ノースダコタ(North Dakota)州の石油パイプラインの建設に先住民が激しく抗議し物議を醸している問題で、米政府は9日、連邦政府所有地での建設作業を停止すると明らかにした。また建設会社に対して周辺地域での作業の自粛を要請した。

 この問題については、先住民スタンディングロック・スー族(Standing Rock Sioux Tribe)が、1200マイル(約1930キロ)におよぶパイプラインの建設によって飲み水が危険にさらされるとして連邦裁判所に計画中止を求めたが、訴えは却下された。

 計画されている「ダコタ・アクセス・パイプライン(Dakota Access Pipiline)」は、スタンディングロック・スー族の居住地から約0.8キロ北に位置し、彼らの水源にもなっているミズーリ川(Missouri River)を横断する。

 スタンディングロック・スー族は、パイプラインによって周辺の文化的に重要な土地も破壊されると訴え、建設会社のエナジー・トランスファー・パートナーズ(Energy Transfer Partners)とミズーリ川の地下の建設計画の認可を行う米陸軍工兵隊(US Army Corps of EngineersUSACE)がこうした懸念に適切に対処していないと主張している(ミズーリ川の地下以外の土地についてはノースダコタ州が建設を認めた)。

 しかし、連邦地裁のジェームズ・ボースバーグ(James Boasberg)判事は、建設の継続が認められた場合にスタンディングロック・スー族が「損害を受けるという証拠は示されていない」として、訴えを退けた。

 ところが判決後、政府はこの件はさらなる検討を要すると述べ、さらにミズーリ川のダム建設でできた人造湖、オアヒ湖(Lake Oahe)付近の連邦政府所有地におけるすべての建設計画を停止するとした。

 陸軍と司法省、内務省は共同で声明を発表し、「オアヒ湖周辺の陸軍工兵隊所有地あるいはオアヒ湖の地下を通るダコタ・アクセス・パイプラインの建設について、陸軍は同地における過去の決定に再検討が必要かの判断を下すまで認可をしない」と明らかにした。さらに、「当面の間、オアヒ湖の西側と東側の20マイル(約32キロ)の範囲内のすべての建設作業を自粛するよう、パイプライン会社に要請する」と述べた。

 ダコタ・アクセス・パイプラインは、ノースダコタ州からイリノイ(Illinois)州まで4つの州にまたがり、イリノイ州からさらに国内の別の州にも石油が輸送される計画だ。ノースダコタ州で産出される石油の輸送コストの削減につながり、より安価なカナダ産の石油に対抗できるようになるとみられている。

 建設会社のエナジー・トランスファー・パートナーズは、計画は安全だと主張している。ノースダコタ州の規制当局は計画の安全性と文化的に重要な土地への影響について13か月間にわたって調査した上で、建設を認可した。

 パイプライン建設をめぐる対立は、全米各地の200部族ほどの先住民も巻き込み、世界的な注目を集めている。建設に反対する先住民や支援者が建設予定地近くにキャンプを張って数か月にわたって抗議を続けており、中には今年4月から抗議活動をしている人もいる。(c)AFP/Nova SAFO