【9月2日 AFP】英ロンドン(London)の金融業界では、茶色の靴を履いて就職面接に臨むと不採用になってしまうかも——こんな「業界のおきて」が、1日に発表された英政府委託の報告書で明らかになった。

 社会的流動性に関するこの報告書によると、英国の金融業界では、上流階級出身者の間で共有されている「不明瞭」な服装規定が求人応募者の見極めに利用されている。たとえば、茶色の靴を公式な場で履くのは非礼とみなされるが、貧しい家庭出身の学生の多くはこの「おきて」を知らない可能性があるという。

「接客を伴う職種では、伝統的な銀行員のイメージや見た目の洗練度が採用基準となることがしばしばある」と報告書は指摘。「年配の銀行員の中には今でも、ビジネススーツに茶色い靴の組み合わせは言語道断と考えている人がいる」と警告している。

 調査に応じた特権階級出身ではない学生の一人は、面接の受け答えは完璧だと言われたのに不採用となった体験を次のように語った。

「面接官から、『君がとても頭脳明晰なのは明らかだ。だが、君は(この銀行には)ちょっとふさわしくないね。洗練さが足りない』と言われた。彼は僕をじっと見て、こう言ったんだ。『君が今つけているネクタイだよ。派手すぎる。そのスーツにそんなネクタイを合わせちゃだめだ』」

 社会的流動性委員会(Social Mobility Commission)のアラン・ミルバーン(Alan Milburn)委員長は、「衝撃を受けた。銀行の支店長の中に、いまだに応募学生の技能や可能性ではなく、スーツに茶色の靴を履いているかいないかで採用を決める人たちがいるなんて」「労働者階級出身だが聡明な学生たちが、ごく一部のエリート大学を出ていなかったり、一部の人しか知らない業界ルールを理解していなかったりするだけで、銀行の上級職から組織的に締め出されている」と危惧を表明した。(c)AFP