【8月21日 AFP】急速に高齢化が進む欧州一の経済大国ドイツで、ドイツ連邦銀行(Bundesbank、中央銀行)が退職年齢を69歳に引き上げるよう提言したことから、国内で激しい論争が再燃している。経済アナリストらは定年引き上げを支持する一方、来年の総選挙に向けて年金を争点の一つにしたい政治家らは反対の姿勢を示している。

 ジグマル・ガブリエル(Sigmar Gabriel)副首相兼経済相は即時に連銀の提案を批判。「工場労働者、店員、看護士、介護労働者、皆がこのアイデアは馬鹿げていると思うだろう。私も同じだ」と述べた。

 論争の的となっている見解は連銀が今月公表した報告書の一文で「現在の財政状態は公的年金の財源確保に十分な状況にあるが、その持続性を確保するためには改変が必要な点もあるという事実から目をそらせるべきではない」と指摘したもの。法定退職年齢については、すでに現行の65歳から2029年までに67歳に引き上げることが決まっているが、連銀は年金制度の安定を確保する手段として、さらに2060年をめどに退職年齢を段階的に69歳まで引き上げるべきだと提案した。

 ドイツ人の現在の平均寿命は男性78歳、女性83歳だが、さらに延びつつある。退職年齢を遅らせるドイツ人も増えてはいるが、大半は平均62歳で退職している。この事実は、急速に高齢化が進み年金を支える労働者人口が減少する中で、政府は年金約20年分の財源確保が必要だということを意味する。

 独誌シュピーゲル(Spiegel)の電子版には「悠々自適に暮らす人たちもいれば失業者もいる中で70歳まで働かせるのか」との反論が投稿される一方、ケルン(Cologne)にあるドイツ経済研究所(IW Institute)のミハエル・ヒューター(Michael Huether)所長は「誰にとっても最も痛みの少ない解決法だ」とドイツ連銀の提案を擁護している。(c)AFP/Mathilde RICHTER