■発光する寄生原虫

 3つの感染症の中で最も致死率が高い睡眠病では、これを引き起こす寄生原虫が中枢神経系に侵入すると、精神機能の低下が始まり、昏睡(こんすい)状態に陥って死に至る。

 脳内に侵入した病原体を標的にできる薬剤を見つけるのは困難だが、研究チームはマウス実験でこの難関をクリアした。実験の最初の段階で、発光するように遺伝子操作を施した寄生原虫をマウスに感染させたのだ。

 論文の共同執筆者で、同じくヨーク大のエルマリー・マイバラー(Elmarie Myburgh)氏は「これにより、撮像システムを用いて脳内の寄生原虫を検出することが可能になった」と述べ、そして「ノバルティスが開発した化学物質を、この画像検査法を用いて試験した結果、化学物質が脳内に達して寄生原虫を殺傷できることが分かった」と説明した。

 この化合物については、他の2つの感染症、シャーガス病とリーシュマニア症に対しても同様に有効であることが判明している。

 これら3つの感染症には、それぞれ治療法が存在するが、どれも高価で副作用がある上、効き目もあまりよくない。

 それに比べて、今回新たに発見された化合物をマウスで試験した結果、マウス細胞の正常機能は阻害されないように見受けられたという。

 世界保健機関(WHO)の「顧みられない熱帯病」に分類されるこれら3つの感染症は、適切な公衆衛生が確保されず、動物や家畜との密接な関係の中での貧しい暮らしを強いられている人々に感染が多くみられる。(c)AFP/Marlowe HOOD