■「画家の筆遣い」も

 1869年から1870年にかけてドガのモデルを務めたドビニーは当時16歳だった。仏ルーブル美術館(Louvre Museum)の元館長も、この顔の主がドビニーであることは「おおいにあり得る」としている。

 だが、キャンバス上で彼女に取って代わった黒い服を着た女性については、氏名不詳のままだ。この作品は 1876~1880年ごろに制作された。

 研究者らによると、「Portrait de Femme」は、新たに下地を設けずに制作が開始されたため、薄く塗られた油性絵具の「隠ペい力」の弱まりとともに、ドビニーの姿が透けて現れたのだという。

 研究者らは、シンクロトロンを使い、顔料に含まれていたヒ素、銅、亜鉛、コバルト、水銀といった様々な金属元素ごとにキャンバスの「地図」を11点作成した。

 これら元素の地図を重ね合わせると、「下の絵」の細部にわたる再構成が得られ、そこには画家の筆遣いさえも見て取れた。色彩だけは推測によるものだ。ドビニーの髪の一部に見られる「ぼやけ」については、ドガが何度か作り直した跡だという。

 研究チームは、「隠れていた絵からは作品と画家についての重要な洞察が得られる」と述べている。(c)AFP/Pascale MOLLARD Mariëtte Le Roux