【8月2日 AFP】つばの広い帽子をかぶって馬にまたがり、丘の上の村に向かうリドワン・スルリ(Ridwan Sururi)さん(43)。一見するとカウボーイのようだが、2頭の馬を使い、「馬の移動図書館」を運営している。

 インドネシア中部ジャワ(Java)島の水田と火山に囲まれたのどかな集落、セラン(Serang)にスルリさんが馬と共に到着すると、村中がお祭り騒ぎになる。子どもたちは「馬の図書館!」と喜びの声を上げ、馬たちがつながれているモスク(イスラム礼拝所)に向かって全速力で走っていく。馬のくらに掛けられた手作りの2つの木箱には、本がぎっしり詰まっている。

 多くの村人にとって、このユニークな移動図書館が本との唯一の接点だ。近隣に図書館はなく、本を買うにしても何キロも離れた大都市の店に行かねばならない。本に接する機会が少ないことは広大なインドネシア全土の村にとって問題となっている。

 馬のトリマーであるスルリさんは、地元で読書を奨励しようとこのユニークな方法を考案した。世話をしている馬と友人に寄付してもらった100冊ほどの本を武器に2015年、馬を使った斬新な移動図書館を手探りで始めたところ大人気に。たちどころにもっとへき地の学校や村からも出張依頼が舞い込んだ。

 スルリさんが慈善活動として運営している地域の図書館を通じて読書が大好きになったのは子どもたちだけではない。スルリさんが馬と一緒に村の細い道をやって来ると、大勢の大人たちが仕事の手を止め、家から出てくる。

 スルリさんは、「子どもたちが私の馬を追いかけてくるのを見ると、すごく誇らしい」と語った。「必要とされている気がするし、とても満ち足りた気分になる」(c)AFP/Nick Perry