【7月31日 AFP】米国で29日、ノースカロライナ(North Carolina)州の「有権者ID法」は、黒人有権者の投票制限を目的として制定されたもので無効だとする連邦控訴裁判決が出された。

 ダイアナ・モッツ(Diana Motz)連邦判事は判決文の中で、ノースカロライナ州議会が制定した有権者ID法は「5種類の方法で投票と有権者登録を制限し、その全てがアフリカ系米国人に過度に影響を及ぼしている」と述べた。モッツ判事はさらに判決文で、2013年8月にパット・マックロリー(Pat McCrory)知事(共和党)が署名して成立したこの法律には「差別的な意図がある」と指摘している。

 米国の投票基準は地域ごとに異なり、選挙の年には注目を集める。ノースカロライナ州などの有権者の支持が民主党と共和党の間で揺れることから「スイング・ステート」と呼ばれる州では特にそうだ。そうした中でアフリカ系米国人は何十年にもわたって民主党を支持してきたことから、政党関係者の間では共和党の州知事らはそうした有権者の投票を抑制しようとしているとの見方が多い。

 中でもノースカロライナ州の有権者ID法は2016年から投票所で写真付き身分証明書を提示するよう義務付けている。モッツ判事は判決文で「そうした身分証明書を所持していない者はアフリカ系米国人に極めて多く、アフリカ系米国人が使用する登録・投票の手段を排除し、狭めている」と指摘した。

 この法律は、人権団体「米国自由人権協会(ACLU)」やアフリカ系米国人の権利を擁護する最重要団体「全米黒人地位向上協会(NAACP)」などから非難されてきた。

 もう一つのスイング・ステート、ウィスコンシン(Wisconsin)州でも29日、スコット・ウォーカー(Scott Walker)知事(共和党)が成立させた同州の有権者ID法の一部を違憲とする連邦地裁判決が出た。その数日前にも別の連邦判事がウィスコンシン州の厳しい有権者の身分証明要件を緩和するよう命じていた。(c)AFP