【9月2日 AFP】フィリピン首都マニラ(Manila)のごみの山「スモーキー・マウンテン(Smokey Mountain)」に設けられたフィールドでは、子どもたちがピッチャーの投球に合わせてバットを振り、その打球は外野近くにひしめく掘っ立て小屋へと吸い込まれていく──。

 マニラにある広大な埋め立て地「スモーキー・マウンテン」には、ケビン・コスナー(Kevin Costner)主演のハリウッド映画『フィールド・オブ・ドリームス(Field of Dreams)』に登場するような野球場がある。その設置をめぐっては、子どもたちが道を踏み外さないようにとの願いが込められたという。

 練習の合間にAFPの取材に応じたピオロ・ペレス君(15)は、「野球がなかったら、僕は今もごみ拾いをしていたと思う」と話した。彼は、痩身のキャッチャーだ。

 ペレス君と60人ほどチームメートらは、かつて、ここに運ばれてくるごみの山から再利用できるものを収集していた。この場所に集まってくるごみは、マニラとその周辺地域の住民1200万人から出たものだ。

 だが、今は違う。慈善団体と地元の実業家たちが運営する野球とソフトボールのブログラムを通じ、彼らはスポーツ奨学金を得て学校にも通えるようになった。

 フィリピンの貧困問題は深刻で、国民4人に1人は、1日あたり1ドル30セント(約130円)未満の収入で生活しているという。とりわけ、スモーキー・マウンテンに不法に住居を構えている人たちの状況は深刻だ。

「スモーキー・マウンテン」は、腐敗したごみの山から強烈な臭いの煙が立ち上ることから、人々からそのように呼ばれるようになった。約20年前、政府は埋め立て地を「閉鎖」し、ここに住んで生活のためにごみ拾いをする人たちのために、土地の一部を整備して、5階建ての集合住宅を建てた。

 だが、当局は収集所の大部分を放置したため、その後も違法投棄が続いた。新しい掘っ立て小屋も次々と現れ、今度は、この地域一帯がスモーキー・マウンテンとして知られるようになった。