■避妊運動の影響も

 タイは1970年代に行った避妊キャンペーンが成功したことに加え、急激な経済成長によって、他の途上国なら100年かかるような高齢化の道を歩むことになった。タイがその変化に対応するための準備期間は数十年しかない。しかも、人口の4分の1にあたる約2000万人の国民には定年後の蓄えがなく、月額20ドル(約2100円)という微々たる国民年金に頼っている。

 労働人口の減少は、折から不振が続くタイ経済にも暗い影を落とす。対照的にミャンマーやカンボジアなど近隣諸国は人口が若く、安価な労働力を求める外国の投資家にとって魅力的な進出先として台頭している。

 タイのシンクタンクの研究員、キリダ・バオピチトラ氏はタイの高齢化問題の一つの解決策として、経済の比重を農業からサービス業に移し、高齢者に労働力にとどまる機会を与えることを挙げる。

 このほか、タイでは定年年齢の引き上げや、高齢者を雇用する企業を対象とした税制優遇も検討されている。

 とはいえ、ナコンさんらが利用するデイケアセンターの設立に尽力したタナポル・ペチャマリさん(64)は、変化がさらに必要だと訴える。ある日、高齢の女性が家から追い出されたところを目撃したといい、「女性はかばんを抱えて泣いていた。社会にこんなことが起きるのは放置できないと感じた瞬間だった」と力を込めた。(c)AFP/Sally Mairs