【8月5日 AFP】ルイク(Luik)家に生まれた三つ子姉妹のレイラ(Leila)、リーナ(Liina)、リリー(Lily)は、小柄な身長、プラチナブロンドの髪、そして青い瞳に至るまで外見はほとんど同じ。ヒップホップダンス、絵画、アイスクリームをこよなく愛するこの三姉妹は、エストニア代表のマラソン選手としてリオデジャネイロ五輪に出場し、五輪史上初の一卵性三つ子として歴史に名前を刻むことになった。

 国際オリンピック史学会(ISOH)のビル・マロン(Bill Mallon)元会長が、「ルイク姉妹がそろって出場すれば、五輪史上初の三つ子となる」と話しているように、五輪では同一大会はおろか別の年を合わせても、三つ子が出場したことは過去に例がない。

 現在30歳のルイク姉妹は、メダル候補を脅かすようなタイムを計測したことはないが、ジカウイルスやどんな障害にも立ち止まることなく、42キロメートルを走るマラソンの練習に励んでいる。

 エストニアが旧ソ連から分離独立する5年前の1985年10月14日に生まれて以降、ルイク姉妹はずっと3人一緒に前進し続けてきた。リリーはAFPに対し、「私たちは小さい頃から活発で、いつも動き回っていました」と明かしている。

■見分けるヒントは髪形

 ロシアとの国境から40キロ離れた東部タルトゥ(Tartu)で五輪への準備を開始した姉妹は、練習では必ずおそろいの蛍光イエローの練習着を身にまとい、エストニア語で「母」を意味するエマユギ(Emajogi)川のジョギングコースを走っている。

 マラソン歴6年にもかかわらずリオ五輪の代表に選出されたルイク姉妹だが、3人のなかではレイラの2時間37分がトップタイムとなっており、2012年ロンドン五輪で金メダルに輝いたティキ・ゲラナ(Tiki Gelana)の2時間23分7秒には遠く及ばない。

 3人とも不屈の精神を持っていると話すレイラは、「自己ベスト更新を目指している」と明かし、「前向きな気持ちで、お互いに支えながら臨み、本番ではスタートからゴールまで一緒に走り続けることを望んでいます。リオ五輪はとても大きなモチベーションになっていますし、自分たちに意志と強さを与えてくれています」と語った。

 ほとんど見分けがつかない3人だが、髪形と走り方がそれぞれを確認するヒントになる。髪の色はボトルドブロンド(脱色もしくは染色)であることを認めた三姉妹によれば、リーナは顎の長さのボブカット、レイラは肩すれすれの巻き髪、そしてリリーはふさふさのロングヘアで、それぞれのこだわりのヘアスタイルが、3人をあまり知らない人にとって見分けるカギになる。

 髪形とは別に3人は走り方も違うと話すコーチは、「競技の間、ずっと一緒に走ってくれればうれしいですが、残念ながら3人は常に同じレベルというわけではなく、同じペースで走ることはできません」とAFPに明かした。

■元ヒップホップダンサーの「白鳥」

 ルイク姉妹は、陸上競技を始める以前はヒップホップのプロダンサーだった。現在はパフォーマンスを披露する時間はないが、リリーとレイラは芸術の才能にも恵まれ、今でも厳しい練習スケジュールの合間に絵を書いているという。

「絵を書いていると気分転換になり、走ることから精神的に解放されます」と話すレイラは、ファミリーネームである「ルイク」のエストニア語の説明として、自身のフェイスブック(Facebook)に白鳥のカバー写真を使用している。

 身長165センチで、引き締まった体つきをしている三姉妹は、大好物の食べ物についても包み隠さず、「3人ともアイスクリームには目がないんです。キロ単位で食べられるくらい!特に夏の暑い日は、アイスクリームをよく食べます。毎週日曜日の朝食は、パンケーキとアイスクリームです」と語っている。

「トリオ・トゥ・リオ(Trio to Rio)」のスローガンを掲げて五輪での成功を目指している3人は、エストニアに帰国してからの計画もすでに立てているという。

 なかでもパンを焼いたりデザートを作ったりすることが大好きなリリーは、「いつか小さなコスメ店か、居心地の良いカフェをオープンするのが夢です」と語った。

「リオ五輪後は、穏やかに過ごすことになるでしょう。3人であることを最大限に利用し、人々が私たちのカフェを訪れてくれるように考えていかなければなりません。私たちは、これからもずっと一緒です」

(c)AFP/Maris Hellrand