■「暴力は沈黙を好む」

 国際女性人権団体「La Strada Ukraine」の弁護士、アンナ・サエンコ(Anna Sayenko)さんによれば「性暴力の問題は無視されている」のだ。多くの場合、被害女性たちは社会の評判を恐れて、すぐに警察に行き法医学鑑定を受けることをしないという。最も大事なのは「被害にあったとき、真っ先にすべきことは警察への通報だと女性たちに伝えること」だとサエンコさんはいう。

 インターネットを通じたメルニチェンコさんの運動は、世間の反応への恐怖を打ち破り、ウクライナ、さらにはロシアの女性たちの心の奥底にある琴線に触れたようだ。心理学者のアレフティナ・シェフチェンコ(Alevtyna Shevchenko)さんによれば、被害経験の共有が一種のグループ療法として機能しているのだという。被害者同士の交流によって、普段は口を閉ざしている女性たちも自己の体験を語ろうと促されるのだ。

「暴力は秘密主義や沈黙を好むのです」とシェフチェンコさんはいう。「問題が存在するのだと声を大にして認めること。それが解決のための第一歩。それ以外に方法はないのです」

■勇気ある女性先駆者たち

 メルニチェンコさんたちのネット運動への反応は、好ましいものばかりではない。男性を中心としたコメント投稿者のなかには、運動や参加女性たちを「目立ちたがりや」「公開ストリップショー」「自家製ポルノ祭り」などと非難するものもある。

 それでも大方の反応は運動を支持するものだ。あるウクライナ人弁護士はサイトの投稿を読んで、女性への性暴力に関する法改正に向けて署名を集め始めたという。

 メルニチェンコさんは、自分を含め性被害体験を共有しようと名乗り出た女性たち、特にレイプ体験を語った女性たちが、性暴力に関する議論の方向を変えウクライナに真の変革をもたらすよう願っている。

「私たちの社会にとって公に議論できることは大きなステップ」と話すメルニチェンコさん。「先陣を切った勇気ある女性たちに感謝したい。彼女たちのおかげで、他の女性たちも自分は独りじゃない、思っていた以上に多くが支持してくれると気付いたんです」(c)AFP/Olga SHYLENKO