【7月20日 AFP】子どもの時に拉致され、8年間の監禁生活を強いられたオーストリア人女性、ナターシャ・カンプシュ(Natascha Kampusch)さん(28)にとって、解放から10年が経過した今日でも、日々の生活は「普通ではない」という。19日にインタビューが公開された。

 カンプシュさんは1998年、10歳の時にオーストリア首都ウィーン(Vienna)で拉致され、2006年8月23日に逃げ出すまで地下室に監禁されていた。この事件は当時、世界中で大きく報道された。

 インタビューは、日刊紙クリア(Kurier)に掲載された。この中でカンプシュさんは「(地下室から)逃げ出した後、メディアでの報道がどんどん過激になり、私はいろいろな意味で制約された。守られ、安全だとは感じられることはなかった」と述べ、「その意味では、社会は第2の監禁場所となった。私には普通の生活がない」と続けた。

 1998年3月2日、カンプシュさんは登校中、失業中だった通信技術者のウォルフガング・プリクロピル(Wolfgang Priklopil)容疑者に拉致され、車両に押し込められた。

 プリクロピル容疑者は、カンプシュさんの両親の家からそう遠くないシュトラスホーフ(Strasshof)の自宅の6平方メートルに満たない地下室に彼女を閉じ込めた。カンプシュさんには「ドアや窓には爆弾が仕掛けてある」と伝え、両親は彼女のことを忘れたと言い聞かせたのだという。

 カンプシュさんは、日常的な虐待行為に耐えながら、監禁開始から3096日後に自力で脱出。プリクロピル容疑者は、カンプシュさんが逃げ出した数時間後に自殺した。

 ドキュメンタリー作品の撮影のため、このほど監禁現場となった家を訪れたカンプシュさんは、「彼は私にほんの少しの食べ物しかくれず、私を辱め、厳しい肉体労働を強いた。髪も剃られた。自分が所有者で、私はただの奴隷であることを示すために、私には最小限の服しかくれなかった」と当時を振り返った。

 現在、この家の所有権はカンプシュさんが持っている。数年前にプリクロピル容疑者の母親から家の所有権を譲られたのだという。

 カンプシュさんは、2010年に最初の自伝を発表している。この本はたちまちベストセラーとなり、後に映画化もされた。8月には、新たな自伝「Ten Years of Freedom(10年の自由)」が出版予定となっている。

 ただ、人々の関心は、必ずしも救いの手に置き換わるわけでないとカンプシュさんは言う。これまでにも暴力的な態度に出る人や、嘘つきや売春婦呼ばわりされてこともあったとしながら、「過去10年間で本当に自由だと感じられたのは、ほんの少し」だと述べた。

 今後の人生については、控えめではあるが希望もあるとし、現在は歌と乗馬のレッスンを受けていると語った。シュトラスホーフの家については、まだどうするか決めていないが、たまに来ては「あちらこちら修復」しているとした。

 国営オーストリア放送会社(ORF)に対しては、「今から自分の人生を自分の手にする段階が始まる」とし、自分が言いたいのは、「私がここにいていいこと、私が生きていいこと、私が前に進んでいいこと」だとコメントしている。(c)AFP/Nina LAMPARSKI