【8月5日 AFP】イサキアス・ケイロス(Isaquias Queiroz dos Santos)の腎臓は1つしかないかもしれないが、ひとたびカヌーに乗り込めば、スーパーマンのような両腕で肺が3つあるかのようにパドルを漕ぐ。

 8月5日から開幕するリオデジャネイロ五輪で22歳のケイロスは、男子1人乗りカナディアン(C1)で2種目、2人乗りカナディアン(C2)で1種目のスプリント全3種目に出場し、ブラジル人選手としては史上初となる3個の金メダル獲得を目指す。

 筋骨隆々の驚異の肉体を見る限り、そこへ向けた不安要素はほとんどないように思える。あるとすれば、子供の頃の事故が彼の体に残した爪痕だろうか。しかし本人によれば、その重傷こそが彼を速くする原動力なのだという。

 リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)での練習中にAFPのインタビューに答えたケイロスは、「10歳のときに、木から落っこちて腎臓を片方なくしたんです」と話し、こう続けた。

「カヌーを始めたのはその1年後でした。みんな、無理だ、ハンディキャップがあるからと思っていたようです。だけど僕は世界に証明しました。ハンデなんかないと。友達には、よくこう冗談を言っていますよ。『腎臓の手術のときに、きっと3つ目の肺を移植されたんだ』ってね」

「僕はこれまで、誰にも負けるもんかと思ってやってきたし、たとえ負けてしまっても、腎臓が1つしかないからなんて思ったりは絶対にしませんでした。試合になればそんなことは関係ありません。ただ、僕に負けた選手が『マジかよ、腎臓が1つしかない奴に負けるなんて』って言うのにはムカつきますけどね」

 ケイロスはリラックスして見えるが、その一方で、目前に迫った戦いに向けて集中力は強烈に高まっている。

「いろんな人から、君はブラジルの金メダル獲得の大きな希望だと言われます。だけどプレッシャーとは感じない。僕はそれを目標だととらえてます。毎日、いろんな人から金メダルに期待してるよと言われるたびに、やる気が増していって、3個の金メダルに向けて練習にも熱が入っていくのを感じます」

「達成できれば、歴史に名を残せる。ブラジルでは、まだ誰も成し遂げたことのない快挙ですからね」