【7月13日 AFP】韓国の首都ソウル(Seoul)西部でフェンスに囲まれた芝生の上を駆け回っている子犬たち。1匹の値段は10万ドル(約1000万円)もするが、少なくとも買い手たちはその価値をよく分かっている。

 その芝生はペットクローン技術で世界をけん引するスアム生命工学研究院(Sooam Biotech Research Foundation)にある。同研究院は過去10年間、文字通り永遠に愛犬と暮らし続けたいと願う人々を相手にビジネスを行い、商業的な成功を収めてきた。

 顧客リストには世界の王族やセレブ、富豪などの名が並ぶ。スアム研究院は愛するペットを失った人々に、クローン技術によって完璧な「代替ペット」を提供して悲しみと喪失感から守ると約束する。

 2006年以来、スアム研究院はペットの飼い主や、優秀な麻薬探知犬や救助犬の複製を求める国の機関からの依頼を受けて、800匹近いクローン犬を誕生させてきた。

「これらの人々はペットとの間に深い絆を持っています。クローン技術は、亡くなったペットの思い出を抱き続ける従来の方法とは違う心理的な癒やしを提供します」と、スアム研究院の研究者兼広報担当者のワン・ジェウン(Wang Jae-Woong)氏は言う。

 ワン氏は「クローンによって、死んだペットを取り戻す機会が得られます」と研究院の「ケアルーム」で語った。ここは室温が一定に保たれており、ガラス張りの囲いの中にいる子犬たちの様子を研究者らが24時間体制で見守っている。

 1996年の歴史的なクローン羊「ドリー(Dolly)」の誕生以来、クローン技術の是非は激しい論争の的となってきた。そうした中、スアム研究院に対しては創設者である黄禹錫(ファン・ウソク、Hwang Woo-Suk)氏が起こした不祥事のため特に疑念の目が向けられている。

 かつて韓国の国民的英雄だった黄氏はヒトの胚のクローンに世界で初めて成功したとの発表がねつ造だった疑惑が持ち上がり、生命倫理法違反や研究費横領などの罪で2014年に懲役1年6月、執行猶予2年の有罪判決が確定した。