【7月5日 AFP】タンザニア・ビクトリア湖(Lake Victoria)に浮かぶウケレウェ島(Ukerewe Island)の夜明けから1時間後。57年間の人生で、焦げ付くような日光に色素のない肌を痛めつけられてきたアルフォンス・ヤコボ( Alphonce Yakobo)さんは、自宅前で元気に落ち葉を掃いていた。

 ヤコボさんは「今が一日の中で一番いい時間なんだ。一日が始まるが、太陽はまだ上がっていない」と話す。あと数分で、つば広の帽子とサングラスを身に付け、露出した肌全体にたっぷりと日焼け止めを塗らなければならない時間になる。

 アルビノ(先天性色素欠乏症)のヤコボさんは体内でメラニン色素を生み出せないため、肌や髪、目に色素がなく、太陽光から身を守れない。他のアルビノの人たちと同じく、ヤコボさんは視力が弱く、皮膚がんになりやすい。

 しかし、太陽だけがアルビノの人々の脅威ではない。

 タンザニアやマラウイなどのサハラ以南のアフリカ諸国の一部では、アルビノの人々の体の一部は薬や幸運と富をもたらすお守りになると信じられており、ブラック・マーケットで売買するため殺害され体を切断されている。

 カナダの慈善団体「アンダー・ザ・セイム・サン(Under The Same Sun)」は、タンザニアで近年発生した161件のアルビノの人々に対する襲撃事件を記録。そのうち76件は殺人で、アフリカで最も多かった。

 しかし、ウケレウェ島は比較的安全だ。島の魚屋で働いているというヤコボさんは「過去には恐怖を感じていたこともあったが、今は神に感謝している。夜に、銃なしで眠れるからね」と話した。

 地元の人々によると、アルビノの人々の家族が、その特異な容姿は呪いのためだと考えてアルビノの人たちを島に残して行ったことが始まりだった。

 ウケレウェ・アルビノ協会(UAS)によると、人口20万人のウケレウェ島で暮らしているアルビノの人は75人。割合は、国全体の平均とおおむね同じだ。

 慈善団体「アンダー・ザ・セイム・サン」タンザニア支部のビッキー・ヌテテマ(Vicky Ntetema)氏によると、タンザニアの他の場所と同様、アルビノの人々の遺体を墓から掘り出そうとする盗掘者が島に来たこともあった。2007年には、髪が白いアルビノの男性1人が襲撃され呪術に使うため髪を切られた。

 ただ、島のアルビノのコミュニティーの代表、ラマダン・ハリファ(Ramadhan Khalifa)さんは「アルビノが殺されたことは一度もない」と強調した。

 もっとも、身体的な暴力はまれでも、差別はよくみられる。

 黒い肌のハディジャ・ナムトンド(Hadija Namtondo)さん(30)には4歳になるアルビノの息子がいる。ナムトンドさんは「この子の父親は息子の肌の色が気に入らず、私たちを捨てたのです」と語った。(c)AFP/Nicolas DELAUNAY