【7月4日 AFP】バングラデシュの首都ダッカ(Dhaka)で外国人が人質となり殺害された事件によって、同国は世界的なテロとの戦いの最前線に立たされることとなった。バングラデシュ政府はこれまで、一連の襲撃事件が国内の反政府勢力によるものと説明してきたが、専門家らはこの政府の主張には説得力がないと真っ向から反論する。

 専門家らの分析によると、米オーランド(Orlando)や仏パリ(Paris)での攻撃でも、実行犯らは、世論の怒りの感情をも考慮に入れて行動を起こしているという。宣伝効果を最大限に高めることを目的に、標的の場所や時間帯、攻撃の方法を決めているというのだ。

 今回、ダッカで標的となった飲食店「ホリー・アーティサン・ベーカリー(Holey Artisan Bakery)」で殺害された20人のうち、18人は外国人だった。実行犯らは銃器を所持していたにもかかわらず、人質の大半を刃物で殺害した。

 犯行は、イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」最後の週末に行われた。標的を非イスラム教徒に絞っていたことが解放された人質らの証言で判明しており、その衝撃はさらに広がった。

 人口約1億6000万人のバングラデシュでは、その約90%がイスラム教徒だが、表向きには世俗主義を掲げている。

 米テロ組織監視団体「SITEインテリジェンス・グループ(SITE Intelligence Group)」によると、今回の事件でもイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出しており、攻撃については「十字軍に参加する国々の市民」を標的にしたと述べている。

 しかし、シェイク・ハシナ・ワゼド(Sheikh Hasina Wajed)首相率いるバングラ政府は、これまでに同国で発生した多数の事件について、ISや国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)が国内に拠点を築けていないとして、その関連を一貫して否定している。たとえ、これらの組織が犯行への関与を明確に表明しているにも関わらずだ。

 事実、アサドゥザマン・カーン(Asaduzzaman Khan)内相はAFPに対し、当局の包囲下で殺害された6人を含む実行犯らが、バングラデシュで約10年前から非合法とされている国内のイスラム過激派組織「ジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)」のメンバーであるとし、ISとの関連を否定している。専門家らはこれに真っ向から反論する。

 米オースティン・ピー州立大学(Austin Peay State University)で安全保障が専門のバングラデシュ人、タジ・ハシミ(Taj Hashmi)氏は、こうした攻撃がISの仕業であることに「曖昧な点はない」と指摘する。そして、これらの事件に国際的なイスラム過激派組織が積極的に関与しており、まだ何も解決していないことを政府は認めるべきだと述べた。

 こうした一連の事件の背景にあるものについて、専門家らは、主要なイスラム政党の活動を政府が制限していることもその一因になっていると考えている。1971年のパキスタンからの独立戦争での役割をめぐり、党の幹部らは近年の裁判で有罪判決を受けている。

 専門家の一人は、「機能不全に陥った国家、そして民主主義の欠如が、テロ行為を助長している」と指摘した。(c)AFP/Abhaya SRIVASTAVA