■高まる警戒

 ドミノ的にEUから離脱する国が出ることに対する警戒心は高まっている。EUに懐疑的な極左から、フランスやオランダの極右まで、英国での離脱派勝利を受けて、自分たちの国でも同様に国民投票をすべきだと主張している。

 オーストリアの首都ウィーン(Vienna)を拠点とする「ゴーガバナンス・インスティテュート(Go-Governance Institute)」の政治学者メラニー・サリー(Melanie Sully)氏は、欧州が外国人嫌いの極右政党に利用されかねない「民主主義の危機」に直面していると、警鐘を鳴らす。

「人々が政治を信用できなくなったら、ポピュリストたちにつけ入る隙を与えることになりかねない。彼らは世の中の空気を読んで大衆に迎合し、自分たちの嘘を正当化していくだろう」と、同氏はAFPに語った。

 社会のエリート層や権力層に反発する感情の高まりの根幹には、貧困層が抱える、自分たちが軽視されているという恐怖心や伝統、アイデンティティーの喪失感があると専門家たちは指摘。2008年から2009年の経済危機の後遺症と現在の難民危機が、反エリート主義が台頭した主な要因になっているという。

 英国で「残留」に投票した若い世代は、多くの高齢者が「離脱」を選んだことに激怒している。今後何十年にもわたって、その選択の影響を受けるのは自分たちだからだ。

 フランス国際関係研究所(IFRI)のドミニク・モワシ(Dominique Moisi)氏は、ブレグジット(Brexit、英国のEU離脱)の激震を共産主義の崩壊と比較して、欧州の歴史における暗い瞬間だと表現した。

「映画『スター・ウォーズ(Star Wars)』のフォースにはライトサイドとダークサイドがある。(欧州の歴史で)ライトサイドはベルリンの壁(Berlin Wall)の崩壊であり、ダークサイドはブレグジットだ」(c)AFP/Fran BLANDY