【7月5日 AFP】彼女は米フロリダ(Florida)州で電気椅子に、彼はアイルランドで絞首台に向かうところだったが、2人は共に死刑を免れ、思いがけず夫婦となった。現在は、夫婦で死刑廃止を訴え活動を続けている。

 死刑を宣告された2人が出会うチャンスは、ほぼ皆無だった。きゃしゃだが用心深い、サニー・ジェイコブス(Sunny Jacobs)さん(68)は、完全に隔離された小さな独房で5年間を過ごし、体に2400ボルトの高圧電流が流されるのをただただ待っていた。

 そこから数千キロメートル離れたアイルランドでは、ピーター・プリングル(Peter Pringle)さん(77)は、監房で衰弱しながら、首の周りにロープがまかれるのを待っていた。ここに入っている間に、頭髪とひげがすっかり白くなってしまったという。

「ピーターと私は、死刑についてあまり話さないが、時々、思い出すこともある。何かの拍子に、監獄内でのことや、外に出た時のことがよみがえる」と、ノルウェーのオスロ(Oslo)で最近開かれた第6回死刑廃止世界会議(World Congress Against the Death Penalty)を前にジェイコブスさんは語った。

 1976年、ジェイコブスさんと当時のボーイフレンドは、9歳の息子と10か月の娘と一緒にボーイフレンドの知人という男が運転する車の中にいた。巡回中の警官が車内に武器を発見したことをきっかけに撃ち合いとなり、警官2人が死亡した。ジェイコブスさんによると、発砲したのはその友人だが、その友人は司法取引し、ジェイコブスさんら2人に罪をなすりつけたのだという。

 友人には3回の終身刑が、ジェイコブスさんたちには死刑が宣告された。5年後に終身刑に減刑されたが、1992年に釈放されるまで、17年近くを監獄で過ごした後だった。ボーイフレンドの死刑は執行された。

 一方、アイルランドでは、ピーター・プリングルさんの死刑執行11日前に、刑が禁錮40年に減刑された。警察官2人が死亡した強盗事件で死刑判決が言い渡されたが、本人は一貫して無罪を主張していた。プリングルさんは、過去にカトリック過激派アイルランド共和軍(IRA)との関わりがあるとして警察ににらまれていたのだという。