【6月17日 AFP】19世紀には鉱山労働者たちの大好物として知られ、今日でも人気の英国伝統のパイ料理コーニッシュ・パスティ。欧州連合(EU)の地理的表示保護制度(PGI)で保護されているこのパイが今、英国のEU離脱(Brexit)の可能性によって危機に陥っている。

 調味料で味付けした牛肉、ジャガイモ、カブ、タマネギを包んだ半円形のパイであるコーニッシュ・パスティは英南西部コーンワル(Cornwall)州のシンボル的存在。地元の生産者の中には、英国のEU離脱によってこの地方料理が受けるかもしれない影響を懸念する人たちもいる。

 コーンワル州の製パン会社ポーツレス・ベーカリー(Portreath Bakery)の代表マリオン・シモンズさんによると、コーニッシュ・パスティがPGIから外れるとコーンワル以外の地域の模造品もコーニッシュ・パスティの名前で売られるようになってしまい、結果として本物のコーニッシュ・パスティの品質と評判を傷つけるかもしれないという。

「コーンワルでは決まり事としてコーニッシュ・パスティにニンジンは入れないんです」とシモンズ氏はAFPに語った。「でもロンドン(London)や他の地域ではそういったものを実際見かけました。コーニッシュ・パスティをまねしようとして、真ん中にドロドロのものが入っているだけなんです」

 PGIで指定された英国の生産品には、他にもスコッチウイスキーやメルトン・モウブレイ・ポークパイなどがある。

 コーニッシュ・パスティは産業としても年に6500万ポンド(約100億円)に上る規模を誇り、少なくとも2000人の雇用者を抱えているという。(c)AFP