【6月20日 AFP】世界反ドーピング機関(WADA)のリチャード・パウンド(Richard Pound)元会長が、8月に行われるリオデジャネイロ五輪でのロシアの全選手出場禁止について、「あり得なくはない」と語った。19日付の英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)が伝えた。

 パウンド氏が率いるWADAの調査チームがロシア陸上界の国家ぐるみのドーピングなどを明かし、昨年11月に同国の陸上選手のリオ五輪出場が禁止された。国際陸上競技連盟(IAAF)は17日、この処分延長を全会一致で決定。さらに国際オリンピック委員会(IOC)は18日、IAAFの決定を支持している。

 ロシアの陸上チームは全種目において出場不可となったが、同国外でトレーニングを積んでいる選手については、中立的な立場としての参加を申請することが可能となっている。

 一方で、ロシアのドーピング規則違反は、陸上競技以外でも広まっているのではないかという懸念もある。

 WADAは5月、法律学の教授で、スポーツ仲裁裁判所(CAS)で長らくスタッフを務めたリチャード・マクラーレン(Richard McLaren)氏の下で、2014年のソチ冬季五輪における国家ぐるみのドーピングについて調査を開始した。同氏は2013年に開催された第14回世界陸上モスクワ大会(14th IAAF World Championships in Athletics Moscow)についても調査を行っており、7月中旬にはその内容を発表することになっている。

 一方で英紙タイムズ(The Times)と独紙フランクフルター・アルゲマイネ(Frankfurter Allgemeine Sonntagszeitung)は17日に合同記事で、ロシア陸上界のドーピング事情を暴露した2人の男性が、1年分の報酬と引き替えに、ロシアの水泳選手の薬物検査を免除するよう申し出を受けていたと報じている。

 パウンド氏はサンデー・タイムズ紙に対し、「ロシア選手団をリオ五輪から閉め出すのは、最後の選択肢だ。しかし、あり得なくはない。モスクワ反ドーピングセンター(Antidoping Centre Moscow)の元所長、グリゴリー・ロドチェンコフ(Grigory Rodchenkov)の主張により、ソチ五輪についての調査が始まった。彼(ロドチェンコフ)は、ロシアの体制の中で、何が起こっていたかを認識するのに十分高い地位にいた」と語った。

 現在、米ロサンゼルス(Los Angeles)の隠れ家に身をひそめるロドチェンコフ元所長は、先月米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に対し、ソチ五輪で禁止薬物を摂取した選手の尿検体を、その数か月前に採取されたクリーンなものに差し替えたと語っている。(c)AFP