【6月17日 AFP】国連(UN)の調査委員会は16日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」がシリアやイラクで少数派ヤジディー(Yazidi)教徒に対する「ジェノサイド(集団虐殺)を行い、今も続けている」との報告を公表した。

 国連シリア調査委員会のパウロ・ピネイロ(Paulo Pinheiro)委員長は声明で、「ISIS(ISの別称)は拘束したヤジディー教徒の女性や子ども、男性たち全てを最も恐ろしい残虐な目に遭わせている」と述べた。

 ヤジディー教徒はクルド語を話し、ほとんどがイラク北部のシンジャル(Sinjar)山周辺に暮らす。イスラム教徒でもアラブ民族でもなく、特有の信仰を持つが、ISに異端視されている。ISは2014年にシンジャルでヤジディー教徒らを大虐殺し、数万人が避難を余儀なくされた。数千人の少女や女性が戦利品として連れ去られ、性奴隷とされた。

 国連は昨年、ISがヤジディー教徒に対するジェノサイドを行っているとみられるとの警告を発していたが、今回より決定的な報告書を発表。逃げ延びたヤジディー教徒らへの聞き取り調査などで構成された報告書は、ISが「ヤジディー教徒を殺害、性奴隷化や奴隷化、拷問、非人間的で下劣な扱いによって、消し去ろうとしている」と指摘している。

 調査委によると、ISの司令官らはシンジャル襲撃以前に明確なヤジディー教徒全滅計画を立てていたことを示唆する証拠があるという。また、男女を引き離すことによってヤジディー教徒の赤ちゃんが生まれないようにしているほか、子どもたちは家族と隔離してIS戦闘員と共に生活させ「ヤジディー教の信仰や慣習から隔離している」として、これはジェノサイドの要素だとしている。

 報告書は、現在も約3200人のヤジディー教徒の女性や子どもたちを主にシリアで拘束し、女性や少女は性奴隷に、少年はISの思想を吹き込んで戦闘員として訓練していると指摘している。(c)AFP