【6月13日 AFP】メープルシロップがたっぷりかかったワッフルとパンケーキ。壁に掛けられた薄型テレビから野球中継が流れているが、誰も見ていない。

 米空母「ハリー・S・トルーマン(Harry S. Truman)」の食堂は、米中部にある普通の食堂と変わりないように見えるかもしれない。だが数時間後には、口ひげをきれいさっぱりそったパイロットたちがF18戦闘機に乗り込んで、ここからシリアへと飛び立って行くのだ。

 彼らのミッションは、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」と関連のある標的を空爆することだ。この任務はもう6か月近く続いている。

 トルーマンは本来なら、今頃はバージニア(Virginia)州ノーフォーク(Norfolk)への帰路についているはずだった。だがバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領の命で、IS掃討作戦が延長されたため、トルーマンはまだ地中海(Mediterranean Sea)東部に停泊している。

 昨年12月29日に戦闘任務を開始したトルーマンの乗員5500人の中には、疲労感をにじませ、郷愁にかられている者も少なくない。夜明けの出撃へ向けて、準備の多くは夜中に行われる。そのため乗員の中には、この半年間、太陽をほとんど見ていない人もいる。

 だが、不満を漏らさないのが、トルーマンの乗員の信条だ。空母全体に放送される「夜のお祈り」の心安かな言葉ですら、最後はトルーマンのスローガンである「Give 'em Hell!(奴らに地獄を見せてやる!)」が強調される。

「予定通りに帰国できないと言われたときは、いつも腹をえぐられたような気分になる。でも1、2日も経てば、彼らは現実を受け入れる。だって俺たちは世界を守る任務を遂行しているのだから」と、トルーマンで武器管理の上官を務めるジム・マクドナルド(Jim McDonald)氏は言う。「俺たちは、任務の成功のために犠牲を払っているのだから、それに反発することは難しい」

 パイロットたちは通常、出撃前にブリーフィングを2回受ける。2回目が終わると、リラックスしたり食事をしたり、トイレに行ったりできる時間が15分間だけ与えられる。その後はすぐに飛行デッキへと上がり、1時間後には出撃だ。1回のミッションは6~8時間続く。

 パイロットのトム・フリン(Tom Flynn)少佐(28)は、戦闘に従事するのは今回が初めてだが、不安は一切見せなかった。

「高揚感とまでは言わないが、何年もかけて訓練したことを実戦で発揮できることに満足しているのは間違いない」と、彼は言う。「実戦でも動揺しないように厳しい訓練を積んだ」