■モスクと国家

 寧夏回族自治区の区都、銀川(Yinchuan)では、回族が中国の発展の恩恵を受けてきたことを象徴する光景が見られる。真新しいものの人通りはほとんどない大通り、中国語とアラビア語と英語で記された道路標識、毎年開催される中国・アラブ国家博覧会(China-Arab State Expo)——。

 とはいえ、全てのイマーム(イスラム教指導者)が国営イスラム研究所の教育に満足しているわけではない。

「あそこで教えているのは、イスラム教でも宗教でもない。政府のプロパガンダだ」と、研究所にほど近いモスク(イスラム礼拝所)の聖職者の1人は言った。「学生たちは信頼され、就職の機会が拡大する。当局は、彼らが将来イマームとなって、(研究所で)教えられたことを教えるようになると知っているんだ」

 モスク併設のイスラム教学校には愛国教育とマルクス主義教育をしないクラスがあるが、卒業生は政府の試験に合格しなければ信者に説教をすることはできない。「政府から宗教について説明してもらう必要は、われわれにはない」とこの聖職者は一蹴した。

 中国は定期的に宗教の信者、特にイスラム教徒を迫害してきた。研究所3年生のハイ・シュンさんは、自分の祖父が昔は「とても困難」だったと話していたと教えてくれた。

 イスラム教徒は全員、一生に少なくとも一度はサウジアラビア・メッカ(Mecca)への大巡礼「ハッジ(Hajj)」を行わければならないとされている。「祖父の世代は、ハッジへの参加など不可能だった。でも、私たちは参加できる」

 今、中国に暮らす回族にはさまざまなことに挑戦する機会があると指摘するハイさんは、「信教の自由の面ではそんなに不満はない」と述べた。(c)AFP Benjamin HAAS