■世界観を変えたシドッチ

 1639年の鎖国以来、江戸幕府は外国の宗教が日本に入ってくることを恐れる一方で、西洋の学問や科学を積極的に取り入れようとしていた。

 シドッチの尋問を担当したのは、儒者で幕政の実力者、新井白石(Hakuseki Arai)だった。地理や語学、世界情勢への深い見識を持つシドッチには敬意をもって接したとされる。

 新井白石は、シドッチを助けようと動いたと言われている。しかし、切支丹屋敷で日本人の夫婦を洗礼した疑いが浮上し、シドッチは地下牢(ろう)に閉じ込められてしまう。

 その後、シドッチは地下牢で死亡した。ただ、研究者らによると、その詳細については分からないままだという。

 遺骨の鑑定作業を主導した早稲田大学(Waseda University)の谷川章雄(Akio Tanigawa)教授(考古学)は、新井白石の著書を例にシドッチが日本に大きな影響を与えたことを強調する。

 谷川教授は、幕政の実力者であった新井白石がシドッチから聞いた話を基に西洋に関する本を著したとしながら、シドッチから得た知識が日本の世界観を変えたことを指摘した。(c)AFP/Harumi OZAWA