【6月4日 AFP】(更新)ボクシング界の伝説、モハメド・アリ(Muhammad Ali)氏が3日、74歳で死去した。

 アリ氏の広報担当を務めるボブ・ガンネル(Bob Gunnell)氏は、「32年に及ぶパーキンソン病との闘いの末、モハメド・アリは74歳でこの世を去った。3度世界ヘビー級王座に君臨したボクサーは、今晩亡くなった」と、家族の声明を発表した。同氏はまた、葬儀については4日に発表されると語った。

 約20年にわたる類いまれなキャリアでスポーツ界の垣根を越える名声を手にし、20世紀のアイコンとなったアリ氏は、2日に呼吸器系の問題で自宅があるアリゾナ(Arizona)州フェニックス(Phoenix)で入院し、その病院で息を引き取った。

 アリ氏の容体については3日に入って懸念の声が上がっていた。そして、世界中にとどろくリング上でのキャリアに加え、人道的活動でも知られるアリ氏には哀悼の声が寄せられている。

 ここ数年の間にアリ氏は入退院を繰り返しており、2014年には軽い肺炎、翌15年には尿路感染症のため、病院での治療を受けていた。

 幾多の激戦で受けた多くのパンチが関連していると考えられているパーキンソン病の為、アリ氏の発言は限られたものとなっていた。それでも公の場に姿を現し続け、家族や広報を通じて自身の考えを述べていた。

 今年4月にはパーキンソン病治療のためのチャリティーイベントに出席し、昨年12月には米大統領選の候補に名乗りを上げているドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の、イスラム教徒入国禁止の訴えを批判していた。

 ボクシング界で長年プロモーターを務めるボブ・アラム(Bob Arum)氏は、「モハメド・アリはその魂でこの国を変革し、世界に衝撃を与えた。彼が残したものは、われわれの歴史から消え去ることはない」と語っている。

 1960年から81年までのキャリアで、アリ氏は56勝5敗の戦績を残した。その中には旧ザイール(当時、現コンゴ)のキンシャサ(Kinshasa)でジョージ・フォアマン(George Foreman)氏と対戦した伝説の「キンシャサの奇跡(Rumble in the Jungle)」も含まれている。

 この他、アリ氏はソニー・リストン(Sonny Liston)氏相手に2度のKO劇を飾り、ジョー・フレージャー(Joe Frazier)氏とは激しいライバル関係を築いた。

 フォアマン氏はアリ氏の訃報の直後、「アリ、フレージャー、そしてフォアマンの3人で1人だった。私の一部が旅立ってしまった。最高の一部が」と、ツイッター(Twitter)に投稿した。

 また、元ヘビー級王者のマイク・タイソン(Mike Tyson)氏は同じくツイッターで、「神が彼の王者を迎えに来た。さようなら最高のボクサー」とつづった。

 米ケンタッキー(Kentucky)州ルイビル(Louisville)でカシアス・マーセラス・クレイ・ジュニア(Cassius Marcellus Clay Jr.)として生まれたアリ氏は、リング上での巧妙な動きとリング外での機知に富んだ、魅力ある人柄で人気を博した。1964年にはイスラム教に改宗し、モハメド・アリに改名。ベトナム戦争での兵役拒否により数年間出場を禁止されたが、その後1971年に最高裁判所が無罪判決を言い渡した。

 改宗に加え、ベトナム戦争や公民権運動に対しての率直な物言いで一部から批判の声も上がったが、アリ氏はその信念を貫き、最終的には活動家として称賛された。

 1996年のアトランタ五輪では聖火の点火役に選ばれ、その2年後には国連(UN)の平和大使となった。そして2005年には、米国の文民に贈られる最高の勲章である大統領自由勲章(Presidential Medal of Freedom)を授与された。(c)AFP