【6月6日 AFP】「これは死にゆくビジネスだ」──10年にわたって営んできた食用犬の飼養場から、米国の動物保護活動家らが犬たちを連れ出すのを見て、ゴン・インヤン(Gong In-Young)さんはつぶやいた。

 移動作業当日、ゴールデンレトリバーやシベリアンハスキー、ロットワイラー、日本の土佐犬、韓国の珍島犬など200匹近くが、サークル内に置かれた金属製の小さなケージの中から、活動家らに対して激しく吠えていた。

 ゴンさんの飼養場は、全国に数千ある施設の内の一つ。食用として育てられる犬たちは、生まれてから食肉処理されるまで、ケージの外に出ることはない。

 韓国では、年間150万~250万匹の犬が食用として消費されているが、若い世代の需要減に伴い、犬肉産業は衰退傾向にある。

 この飼養場は、米国を拠点とする動物愛護団体「国際人道協会(HSI)」が閉鎖する5か所目となり、これまでで最大の規模を誇る。閉鎖を受け、「この仕事を辞めることができて幸せだ」とゴンさんは語った。

 そして、「昔は、他に食べるものがなかったから犬を食べた。だが今の若い人たちは犬を食べる必要がない。犬食は人々にとって奇妙なものとなった」と続けた。

■「好みの変化」

 調査会社ギャロップ・コリア(Gallup Korea)によると、昨年1年間に犬肉を食べた男性は、50~60代では回答者の約半数に上ったが、20代ではわずか同20%にとどまった。

 ゴンさんは、犬をペットとして買う人が増えていることも、犬肉が敬遠される大きな理由だと述べた。

 国際的な動物愛護団体らは、長年にわたって犬肉産業を批判の対象としてきた。HSIは昨年、飼養場4か所を閉鎖し、計225匹の犬を救出している。大半の犬は、米国やカナダへと飛行機で送られ、現地で里親に引き取られたという。

 飼養場の閉鎖・廃業に伴い、場主らは飼育していた犬の頭数に応じて最大6万ドル(約640万円)を受け取ることができる。これを原資にして、フルーツや野菜などを取り扱う、より「人道的」な事業を立ち上げることが可能となっている。