【6月3日 AFP】ドイツ連邦議会(下院)は2日、第1次世界大戦(World War I)中の1915~16年に起きたオスマン帝国軍によるアルメニア人殺害は「ジェノサイド(集団虐殺)」だったとする決議を採択した。これを受けてオスマン帝国の後継国トルコは駐独大使を召還するとともに、さらなる措置も辞さない構えを見せた。

 投票の結果、反対1、棄権1以外全員賛成という圧倒的多数で可決されたこの決議に法的拘束力はないが、かねてトルコと欧州の関係を揺るがしてきた問題に改めて踏み込んだ格好となった。

「ジェノサイド」という言葉を使うかどうかは、長く世界の意見を二分してきたこのアルメニア・トルコ間の問題の核心に関わる。アルメニア側は10年にわたり、アルメニア人殺害がジェノサイドと認められるよう働き掛けてきた。一方トルコ側は、トルコ人もアルメニア人も同数が犠牲になっており、双方にとっての悲劇だったと主張している。

 今回の決議採択にトルコは激怒。駐独大使を召還して話を聞くとともに、駐トルコの独大使代理を外務省に呼び出した。

 レジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は、この動議が対欧関係に「深刻な影響を及ぼす」と警告。一方ベキル・ボズダー(Bekir Bozdag)法相はドイツ史を引き合いに出し、「自分たちはユダヤ人を焼いておきながら、トルコ人に対しジェノサイドと非難するとは。まず自国の歴史を振り返るべきだ…わが国の歴史に恥ずべきことは何もない」と述べた。

 世界では既に、フランスやロシアを含む20か国以上がこの事件をジェノサイドと認定している。

 ドイツをはじめとする欧州連合(EU)は、人権問題などで摩擦はあるものの、欧州への移民の記録的流入に歯止めをかけていく上でトルコに頼っており、両国関係をぎくしゃくさせかねないタイミングでの採択となった。

 アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相の報道官は、首相も決議を支持したと明かしたが、メルケル首相は他の公務を理由に採決を欠席した。

 メルケル首相は、北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長との共同記者会見で決議に関する質問への回答は避け、「アルメニアとトルコの対話を発展させていくために全力を尽くす」と述べるにとどまった。(c)AFP/Hui Min NEO with Fulya OZERKAN in Ankara