【6月7日 AFP】墓標もない場所に葬られた名もなき移民、集団墓地に遺棄された殺人事件の犠牲者、自然災害による行方不明者──。必至の捜索もむなしく、死者を弔えないまま苦しい時間を重ねている家族は、世界中で何百万にも上るという。

 エルサルバドル人外交官のアグスティン・バスケス・ゴメス(Augustin Vasquez Gomez)氏は、「愛する人が行方不明になった時、その真実や原因、理由を知らずして、その人の人生の本を閉じることはできない」と語る。

 何年も続いた内戦後、約8000人が行方不明のままとなっているエルサルバドルは、行方不明者国際委員会(ICMP)の活動を支援する協定に最近署名した国の一つだ。

 この他、2013年11月に台風30号(アジア名:ハイエン、Haiyan)に襲われ、2000人が依然行方不明のフィリピンも、同協定に署名した。

 紛争や災害で行方不明になった人を見つけ出したり身元を確認したりするのは永遠の課題であり、世界全体での総数は分かっていない。

 ICMPのキャスリン・ボンバガー(Kathryne Bomberger)事務局長によると、その数は「膨大」になると考えられている。イラクだけでも、サダム・フセイン(Saddam Hussein)政権初期までさかのぼれば、25万人から100万人の間と推算されるという。

 旧ユーゴスラビアでの紛争に端を発し、1996年に当時のビル・クリントン(Bill Clinton)米大統領が設立したICMPは、最新鋭のDNA型鑑定技術を駆使し、同紛争の行方不明者4万人のうち、7割以上の身元を特定した。