■リバウド氏も「ここに来たら命が危ない」

 地元非政府組織(NGO)のスポーツを通じた活動を支援するためにファベーラを訪れるチームもあるだろう。ただし、そうした訪問は厳重に警備されることが考えられる。一方で、オーストラリアなどは、自国の選手がファベーラを訪れることを禁じた。

 先月には、スペインのセーリング五輪代表チームのメンバーが観光客に人気のサンタ・テレーザ(Santa Teresa)地区で、5人の若者に銃を突きつけられる強盗事件があった。2月にも、アルゼンチン人の観光客らがコパカバーナ・ビーチで強盗事件に巻き込まれ殺害されている。

「自分の国にいなさい。ここに来たら命が危ない」──このように訪問の自粛を強く呼びかけたのはサッカーの元ブラジル代表選手、リバウド(Rivaldo)氏だ。これほど強く注意を促す人はそう多くないが、伝えようとしている恐怖は現実のものだ。

 ブラジルは長年、世界で最も危険な国のひとつとして知られてきたが、近年の景気低迷による財政難が、最悪のタイミングで警備体制にも影響を及ぼしているようだ。

 地元メディアのグロボ(Globo)の調査によると、リオデジャネイロ州では、巡回区域を回ることできる警察官の数が全体の約半数にとどまっているとされる。ファベーラに配属されたことや負傷や病気で休職していることなどが、その理由だ。

 リオ州の財政状況は非常に厳しく、残業代やパトカーの燃料費を捻出することもままならないという。

 そうした厳しい状況を反映するかのように、警察官が殺害されるケースも増えている。日刊紙エスタド(Estadao)によると、同州では今年、殺害された警察官の数が5月半ばの時点で39人に上っているという。うち、3分の2は勤務時間外だった。昨年は、1年間で85人の警察官が殺害されている。(c)AFP/Sebastian Smith