【6月2日 AFP】ブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)の富裕層が住む地区の集合住宅入り口で、ハザードランプを点滅させて、セキュリティーゲートが開くの待っていた一台の高級自動車。その時、ドライバーの目の前に突然何かが現れた──銃口だ。

 犯行グループは3人。1人が運転手側のドアに銃を突きつけている間に残りの2人がドアをこじ開けて金品を強奪し、直後に現場から逃走した。防犯カメラの映像には、20秒ほどの犯行の様子が捉えられていた。

 間もなく五輪が開催されるリオだが、これまで比較的安全とされていた地域でも犯罪の発生率が上昇している。

 2002年公開の映画『シティ・オブ・ゴッド(City of God)』で、リオのスラム街「ファベーラ」における暴力については世界的に知られるようになった。

 リオ五輪開催中、参加選手1万500人や予想される50万人の観光客たちは、ファベーラには近づかないように注意するかもしれないが、これまで安全と考えられてきた高級住宅街でも、犯罪リスクに対する懸念は大きくなっている。

 前出の高級車を狙った強盗事件は、観光地イパネマビーチ(Ipanema Beach)の近くにある高級集合住宅「ダイヤモンド・タワー」入り口で起きたものだ。この1か月前にも同じ通りで同様の事件があったが、その時は狙われた車両にリオデジャネイロ州知事代行の娘が乗っていたため、注目度も大きかった。

 高級住宅街に暮らす人々にとって、暴力はもはや人ごとではなくなっている。五輪期間中は、警察官と兵士約8万5000人が市内に配備される予定だが、彼らの存在が、この危険な町の安全を守るうえで、どれだけ効果的なのかは分からないと言われている。この数字が、2012年ロンドン五輪の時の約2倍であるにもかかわらずだ。

 ファベーラでは、警察官と麻薬密売人の銃撃戦が頻繁に起きる。こうした衝突の影響は、数ブロック離れた、選手や観光客が集まる静かな場所にも及ぶ恐れがある。流れ弾が届く距離にあるためだ。先日も、選手村の近くやビーチバレーなどの会場となるコパカバーナ(Copacabana)の近くで銃撃戦が起きた。先週末にイパネマ近くのファベーラ、ロッシーニャ(Rocinha)地区で起きた銃撃戦は約1時間続いた。