【6月1日 AFP】米航空宇宙局(NASA)の有人月探査ミッション「アポロ(Apollo)計画」が、月の表面からかき集めた石を地球に持ち帰って以来、科学者らは数十年の間、月がカラカラに乾ききった星であることを示す証拠を手にしたと確信していた──。しかし、彼らは間違っていた。

 今から10年近く前、当時の最新技術を用いた分析によって、この塵(ちり)まみれのサンプルに含まれる水が検出された。そして、5月31日に発表された最新の研究は、そうした(非常に大量の)水がいつ、どのようにして月に行き着いたのか、その可能性について言及している。カギとなるのは小惑星だという。

 約45億年前、地球と火星サイズの惑星とが衝突した結果形成された月には、その後の数千万年かそれ以上の間、「炭素質コンドライト」として知られる、水を豊富に含む小惑星が次々と降り注いだ。

 当時の地球もこれと同じ状況だった。このことは、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された研究成果が、学術的な範囲にとどまらない興味を呼ぶ理由の一つとなっている。

 研究論文の主執筆者で、英オープン大学(Open University)の研究者、ジェシカ・バーンズ(Jessica Barnes)氏は「月は、巨大なタイムカプセルとみなすことができる。形成後に地球と月が経験した衝突の歴史の記録が、そこに保存されている」と説明する。

 地球上では、まるでボードゲームの駒のように大陸を動かす構造プレートによって、この記録がほとんど消されてしまっている。

 論文の共同執筆者で、フランス国立自然史博物館(National Museum of Natural History)鉱物学研究所の研究者、ロマン・タルテス(Roman Tartese)氏は、月に閉じ込められている水の存在について確信しているとしても、現在の科学者らは、それがどのくらいの量なのかは分かっていないことを指摘した。