【5月30日 AFP】地中海(Mediterranean)で、27日までの3日間に起きた遭難事故により、700人の移民が死亡した恐れがあることが29日、明らかになった。生存者らは、幼い子どもたち数十人が水死したと証言している。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と子ども支援の国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)」によると、26日朝に起きた移民船沈没事故で救助され、イタリア南部沿岸のタラント(Taranto)とポッツァッロ(Pozzallo )に搬送された人々の証言から、この事故だけで500人以上が犠牲になったとみられることが分かった。うち女性1人は、ロープによって頭部が切断されて死亡したという。

 地中海では25日にも約100人が行方不明になる海難事故が発生。また、27日に起きた事故では45人の遺体が収容されており、UNHCRはこれら3件の事故で最大700人が死亡した恐れがあるとしている。

 セーブ・ザ・チルドレンのシチリア(Sicily)島駐在広報担当がAFPに語ったところによれば、26日に沈没した船は25日にリビアを出港したもので、1100人ほどが漁船2隻とゴムボートに分乗していた。漁船にはそれぞれ約500人が乗り、先頭の船が2隻目をえい航していたとされる。

 だが、何らかのトラブルが発生し、2隻目が沈み始めると、乗っていた人たちは先頭の船に向かって泳いだり、えい航用のロープにしがみついたりした。生存者の証言によると、先頭の船に乗っていたスーダン人の船長がロープを切断。勢いよく跳ね返ったロープによって、女性の頭部が切断された。

 2隻目の船はその後すぐ、船倉に詰め込まれていた人々と共に沈没したという。船長はその後、搬送先のポッツァッロで、人身売買に関与したとみられる3人と共に逮捕された。

 伊紙レプブリカ(La Repubblica)は生存者たちの話として、多数の新生児を含む子ども40人が死亡したと伝えている。エリトリア人のキダネ(Kidane)さん(13)は支援団体に対し、「母と11歳の妹が死ぬのを見た。辺り一面、遺体だらけだった」と語った。

 地中海では、夏季の訪れに伴う好天を背景に、リビアからイタリアを目指す危険な航海に出航する人々が急増している。伊ANSA通信によれば、リビアからはここ5日間、毎日15隻を超える船が出港している。(c)AFP/Ella IDE