【5月28日 AFP】オーストリア政府は27日、ナチス・ドイツ(Nazi)の指導者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の生家がネオナチの「聖地」になることを阻止するため、この住宅を収用する法案を提出した。

 ドイツ国境に近いオーストリア北西部の風情のある町ブラウナウ・アム・イン(Braunau am Inn)の角地にある大きな家はヒトラーが1889年に生まれたところで、地元の女性の一族が1世紀以上所有してきた。

 オーストリア政府は1972年に家主と賃貸契約を交わし、建物は障害者センターとして利用されていたが、女性が改築を拒んだため5年前に契約は打ち切られた。

 政府は4月9日、2011年以降、空き家になっていたこの建物ごと地所を収用する方針を決定したと発表。建物は町の歴史地区にあり文化遺産として保護されているため取り壊すことはできない。

 オーストリア内務省は27日、「数年間にわたってこの不動産購入に向けた交渉を続けてきたが、失敗に終わった。…唯一残された選択肢は、土地を収用して国有財産とすることだ」として、所有者に「適正な補償金」を支払う意向を表明した。所有者はメディアの取材に応じようとしていない。

 この問題は1万7000人が住む地元ブラウナウ・アム・インで激しい議論を引き起こし、難民収容センターやオーストリアのナチス・ドイツからの解放をテーマにした博物館への転用を希望する声や、取り壊しを求める意見などが出ている。

 建物の外には、「平和と自由、民主主義のために。ファシズムを二度と繰り返してはならない。数百万人の死者が警告する」という言葉が刻まれた石碑が立っている。(c)AFP