■「寛大な占領」

 現在の日米関係へと至る道筋は、原爆投下という第2次世界大戦(World War II)における暴力の極致から始まっただけではなく、その後に起きた出来事によって定まったといえる。

 敗戦から7年間、日本はダグラス・マッカーサー(Douglas MacArthur)元帥の指揮する連合軍によって占領された。その間、米国主導で起草された日本の交戦権を否定する日本国憲法が制定された一方、女性参政権が実現するなど女性の解放と社会的地位向上の芽生えがみられ、画期的な社会改革が進んだ。

「つまり、マッカーサーの占領は特別な占領で、世界の歴史に例のないほど寛大というか奇妙な占領だったと思うんです」。子どもの頃に米軍の空襲を経験したジャーナリストで、現状を予見したかのような表題の著書「オバマ大統領がヒロシマに献花する日」を2009年に出版した松尾文夫(Fumio Matsuo)氏は、こう語る。

 無論、だからといって原爆投下が忘れ去られたとか、取り繕われたということではない。

 長崎で被爆した田中熙巳(Terumi Tanaka)さんは、オバマ大統領の広島訪問で最も重要なのは、理解を示すことだと述べた。「あえてその席で謝罪しなくても。大統領の心が動いて、やったことに対する反省と、核兵器廃絶のために何をやるべきか、理解してくれるなら」。こうした気持ちはオバマ氏の訪問を前に、日本人全般に広く見られている。

 確かなことは、原爆投下が日米両国を独特な絆で結び付けているという事実だ。「オバマ大統領の訪問の意義は、世界で唯一の核兵器使用国である米国と、唯一の被爆国である日本が、核なき世界の実現に向けて強い決意を示すことにある」と日本の外務省関係者は報道陣に説明した。

 戦後70年を経て、日米両国には多くの共通点ができた。日本人は野球やハリウッド映画を愛し、米国人はすしやアニメを好む。

 米ハワイ(Hawaii)州ホノルル(Honolulu)に拠点を置くシンクタンク「パシフィックフォーラムCSIS(Pacific Forum CSIS)の日米関係の専門家、ブラッド・グローサーマン(Brad Glosserman)氏は、今後のより高い目標は「両国の関心や価値観が一つに収束していき、双方の社会が多くの点で相互に認め合い、よく似た視線で世界を見つめること」だと語った。(c)AFP/Kelly OLSEN