■テレビが全て

 トランプ氏のもう一つの切り札は、テレビの注目をある意味でほぼ独占したことだ。毎日のようにテレビのインタビューに応じる同氏の影響で、共和党予備選挙の討論会はスポーツを除けば米史上最高のケーブルテレビ視聴率を記録した。

 ベトナム戦争(Vietnam War)の英雄ジョン・マケイン(John McCain)上院議員を批判したり、メキシコとの国境を閉じると言ったりするなどの派手な言動と自ら巻き起こした論争により、トランプ氏の選挙戦はメディアの注目を集めた。

 メキシコとの国境沿いに巨大な壁を建設すると約束するトランプ氏の発言はテレビで何度も放送されて最大限の効果を発揮した。選挙集会が最初から最後までテレビ放送される候補者はトランプ氏ただ一人だ。全く金を払わずにこれらの放送をしてもらったトランプ陣営は、選挙広告に使われるはずだった数千万ドル(数十億円)の費用を節約することができた。

 トランプ氏の古くからの親友ロジャー・ストーン(Roger Stone)氏は「有名人であることがトランプ氏の最大の財産だ。15シーズン放送された「アプレンティス(The Apprentice)」(トランプ氏が出演した人気テレビ番組)で大いに名前を売った」と米政治サイト「ポリティコ(Politico)」に語った。「有権者にとってニュース番組とリアリティー番組の間に境界線はない。テレビだ。テレビが全てなんだよ」

「アプレンティスに出演したトランプ氏は、背もたれの高い椅子に座り、完璧に照明を当てられ、完璧にメーキャップされ、完璧にヘアスタイルを整えられている。完璧な衣装を着ていて、決断力もあるしタフだ。彼が物事を決める」「トランプ氏はいかにも大統領らしいと思える姿を見せ、そのように振る舞うんだ」(ストーン氏)

(c)AFP/Ivan Couronne, Jim Mannion