【5月13日 AFP】中国でサッカー選手の育成に関わているキン・チャイ(Kin Chai)さん(27)は、自身がまだ少年だった90年代、通っていた地方部の学校にはサッカーチームはなく、グラウンドもボールもなかったため、子どもたちはボールの代わりに水を入れたプラスチック製の容器を蹴っていたと話す──。

 それから20年、同国ではサッカーがブームとなり、W杯を招致し、いつか優勝を果たすという習近平(Xi Jinping)国家主席の夢を実現させるため、巨額の投資が行われている。

 長い間、英プレミアリーグなど外国のサッカーに熱を上げてきた中国は現在、スター選手を高額で国内チームに招いている他、次世代の選手育成を目指し、何千ものサッカースクールの開設を計画している。

 しかし、それと同時に、潤沢な資金を投入しても、どうにもならないものもあるということに気づき始めた──「サッカー愛」だ。このシンプルな要素こそが、エリート選手を輩出していく上で決定的に重要と指摘する専門家は多い。

 キンさんは今、勉強が忙しすぎてスポーツをする時間がない自国の子どもたちに、その情熱を感じてもらうための活動に参加している。

 大学で体育学の学位を取得したキンさんは、放課後のサッカープログラムの全国ネットワーク構築を目指す非営利団体(NPO)「ドリームズ・カム・トゥルー(Dreams Come True)」でコーチを務めている。

 同NPOの代表は、「生徒たちの空き時間に、ちょっとしたトレーニングを行っている」と話す。

 南部の都市、広州(Guangzhou)を拠点とする同プログラムの一番の目標は、子どもたちに運動する機会を与え、「社会に貢献できる」存在になってもらうこと。そして、才能があると見込まれた場合にのみ、さらなるトレーニングを行うのだという。

 このようなのんびりとしたアプローチは中国では珍しい。現在、国内はもとよりアジア地域でも最強豪チームの一つとなった広州のクラブチーム、広州恒大(Guangzhou Evergrande)の大株主の不動産大手、恒大(Evergrande)のスタイルとは大きく異なる。