【5月11日 AFP】世界的に高い評価を受けた映画に出演して名をはせたアフガニスタンの女優、マリナ・ゴルバハーリ(Marina Golbahari)さん(24)とその夫は現在、家を追われ、フランスにある亡命希望者向けの薄汚れた施設で暮らしている。自殺まで考えたという事の発端は、ゴルバハーリさんがベールをかぶらずに写真に写ったことだった。

 夫婦がフランスを訪れたのは5か月前、映画祭に参加するためだった。しかし以来、命の危険を感じ、人目に付かないように生活している。夫のヌールラー・アジジ(Noorullah Azizi)さん(28)は、「(フランスに)とどまるとは考えてもいなかった」ため「ほとんど何も持ってこなかった」と明かした。祖国で2人や家族に対する殺害脅迫を受けるようになり、帰国できなくなってしまったのだという。

 ゴルバハーリさんは2001年末、まだ10歳だった時に首都カブール(Kabul)でスカウトされた。映画『アフガン零年(Osama)』のヒロインに抜てきされ、一躍スターになった。同作はゴールデン・グローブ賞(Golden Globe Awards)も受賞している。

 この作品の中で、アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)の政権下で少年に変装する少女を演じたゴルバハーリさんは「映画は私の命」とAFPに語る。「映画の中でなら、アフガニスタン国民について何でも語ることができる」

 夫のアジジさんは、1980年代の旧ソ連によるアフガニスタン侵攻から逃れた何百万人もの難民の一人として、パキスタンで育った。祖国で急成長しつつある映画業界に飛び込んで俳優になり、赤貧状態から抜け出した。たくましい体格とあごの角ばった顔で、警官やタリバンと戦う兵士の役がもらえたという。アジジさんは「幸せだった。何もかも手に入ったところだった」と振り返る。

■殺害脅迫

 アジジさんとゴルバハーリさんは、交流サイト(SNS)のフェイスブック(Facebook)上で出会い、たちまち恋に落ちた。しかしアジジさんの家族は2人の交際を歓迎せず、昨年9月に行われた結婚式への出席も拒否した。アジジさんはその理由をこう語っている。「彼らにとって、僕の妻が女優であることは恥だった。全世界が彼女の写真を見ることができるから」

 だが、昨年の10月初めには、より深刻な問題が持ち上がった。韓国・釜山(Busan)で開催された国際映画祭に参加した際、頭部を覆っていないゴルバハーリさんの写真が出回ったことで、イスラム保守派の激怒を招いたのだ。